11−89【澪と紫月の巡り2】



みお紫月しづきの巡り2◇


 桁が違うと、この異世界に来て初めて思った。

 強さとか能力とか、そんなんじゃ表せないほど圧倒的な、見えない何か。

 それがこの子にはある。それが、抹消されるほどの力を主神から受け継いだ……【復讐の女神オウロヴェリア】だって言うのか。


「なぁ、どうしてあの時……俺を刺したんだ?言っちゃなんだが、俺は君を知らないし君も俺を知らないだろ?」


 再度歩みながら言葉を紡ぐ。

 今度は、顔がはっきりと見える位置まで。


「……邪魔だったから」


 ああ、そうだよな。


「へぇ、障害物ってとこか。確かに……前世の俺は百九十超えてるもんな、邪魔っちゃ邪魔だな」


 怒るな。こんな感情を持ってこの子と向き合えば思うツボだぞ。

 それに、もう怒っちゃいない。感謝したいくらいなんだからな……今の俺は、ミオ・スクルーズなんだから。


「気に入らないわ」


「なにがだい?」


 徐々に、また負のオーラが噴き出す。

 この子は怒りを隠そうともしない。流石に復讐の神だな。


「――全部。全部全部全部!」


 初めて玉座から立ち上がり、その全貌が分かる。

 やっぱり数年前に見たときとは別人だ……人とは思えない雰囲気は、間違いなくアイズたち女神と同等。

 漆黒の髪は、復讐という負の感情で塗り固めたかのような、そんな悪意の糸を表している。


「なら、俺をまた殺すかい?」


「コロス!!何度でも!その魂が消えてなくなるまで!!」


 それが異世界まで俺を追ってきた理由か!

 どんなチートか知らないが!俺はともかく、この世界にはいい迷惑なんだよ!

 だから!――俺は君と戦う!!


「だったら全力だ!俺だって本当は、異世界でスローライフしたかったんだよ!それを女神共があーだこーだ!それでも、この授かった力で……君を――叱ってやる!!」


 【カラドボルグ】と【シヴァ】を顕現けんげん

 本当は効率が悪いと言われる二刀流、異世界やゲームだから成立するんだよな。


「私が、何をしたっていうのよ!邪魔をしたお前が!私を叱る!?どんな立場で!!」


 この子は、自分がした事の罪悪を分かっていないんだ。

 人を殺めるという禁忌きんきも意に返さない。

 それを体現させられた、復讐の神という存在……それを作り出した元凶、【主神レネスグリエイト】!


「間違った子供を叱るのは、大人の義務さ。それをしてくれる人も、友達も……君は持たなかったんだろ!だから俺がしてやる!君に一度殺された俺だから、そのやってはいけない事を、世界のルールを……教えるんだ!!」


 俺は【カラドボルグ】に【破壊はかい】を纏わせる。

 それに呼応するように、シャーロットは手の平を俺に差し向け、神力を集約させた。


 それは、覚えしかない反応。


「!!」


 同じだ。これは――【破壊はかい】だ!

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