11−87【女王へ続く道6】



女王さいかいへ続く道6◇


 リードンセルク城の破壊。思いついてしまったのだから仕方がない。

 現状は完全な敵であるシャーロット・エレノアール・リードンセルクこと、しづき……おそらく紫の月、かな?


 あの子はこの国を、生きる民を、仕える兵たちをなんとも思っていない。

 当然だが、聖女に改造されていない兵士もいるわけで……そいつ等はほぼ百パー、女王に忠誠をちかっていない。

 なら、無用な殺しはしたくない。話して要求をのんでくれるのなら、こちらからは一切の手出しはしない……ということを、兵士に説明した。


 そしてその兵士は、解放された身体をさすりながら。


「ほ、本当に助けてくれるんだな?」


「ああ、嘘は吐かない。その代わり、極力大勢の人をこの城から撤退させてくれ。アンタのような兵士は勿論、この城で働いてる使用人とかもな」


 数は多いだろうが、俺が女王と話している時間で逃げてくれれば。

 急ぐに越したことはない。何故なら、話し合いで済む確率が極端に低いからだ。


「それはいいが、君はいったい誰なんだ。こんな真似をして、極刑では済まんぞ?」


「俺は、アンタ等の言う異能者さ。それこそ女王が探しているような、異常能力者だよ。こんな感じに……」


 パシュン――と、椅子とテーブルを【破壊はかい】で消して見せる。

 おーおー、俺も【破壊はかい】の操作、上手くなったもんだぜ。


「こうやって城を消す」


「……な、なるほど」


 兵士は顔を青くして「そりゃ俺等じゃ勝てん訳だ」と納得の模様。

 単純でなによりだよ。


「それよりだ。城の破壊は徹底的にやるからな、だから必死に逃げろよ?くれぐれも、アホみたいにのんびり逃げるのは止めてくれ。逃げ遅れてから文句を言われても困るからな」


「分かってるが、全部が全部言うことを聞くとは思えん。仮にも女王陛下に仕える兵士だ……中にはあの異常な女王を神聖視する者も居るんだよ」


「そういう奴らはほっといてもいい、言っても聞かないからな。始めから、相手をするだけ無駄に終わる」


「案外クールな事を言うな、君」


 クールじゃなくてドライだよ。

 顔も素性も知らない奴らにまで温情を与えていたら、キリがないからな。

 それに、女王へ組みするなら始めから敵だ。


「じゃあさっさと行動開始。そこに寝てる奴も運んでくれよ?」


「お、おう……」


 聞く限り、城中で女王に不満を持って働いていたのは一万人前後。

 これを少ないと見るか多いと見るか、この大きな国から見たら少ないんだろうが……その理由は、徴兵ちょうへいや聖女の実験、大臣二人が出払っているのが大きい。

 この兵士が全員を説得できるとは思えないが、それでも犠牲は減らしたい。


「行ったか……シャロ、これでいいよな?」


『……致し方ないかと。で、ですが、本当にリードンセルク城を?』


「ああ。能力【破壊デストロイ】……それで完全に破壊する」


 些細な可能性である話し合い。

 圧倒的に低い確率を模索するより、今の俺に出来る事を。


 そう決心して、俺は部屋を出る。

 慌ただしく、城内は動き始めた……それだけで、どれほど女王に不満があったか分かるな。

 自分で言うのも何だが、こんな不審者の言うことを聞いてしまうほど、この国は破滅に向かっていると事……なんだろう。


「さて、紫月しづきって子の所に向かうぞ。あっちも気付いてるだろ……案内頼むぞ、シャロ」


『……はい。ミオ様』


 十七年振りに、俺は因縁と再会する。

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