11−86【女王へ続く道5】



女王さいかいへ続く道5◇


 【無限むげん】で部屋の防音値を操作し、扉も強固にした。

 これでこの一般兵Aがどんなに叫ぼうが、他の誰かが入ろうとしてこようが無駄だ。


「く、く!このおぉぉぉ!」


 無理矢理動こうとする兵士だが、冷や汗凄いな。

 前に戦った【リューズ騎士団】の騎士より抵抗してるぞ。


「諦めて俺の質問に答えろ。答えてくれたら命は取らねぇよ」


「だ、誰が答えるか!これでも俺は、女王国の兵だ!」


「……そこまで見栄を張るなら、部屋でコソコソと国の内情を話してんじゃねーよ」


「うっ!!き、貴様聞いていたのか!!」


 赤面する兵士……お前面白いな。


「まずはお顔を拝見はいけん……っと」


「や、やめろぉぉ!」


 兜を脱がす。律儀に室内でも被ってるとはなぁ。


「まぁ普通だな。確認するまでもなかったか」


「じゃあ何故脱がした!!い、いいからもう殺せ!」


 男のくっ殺は需要ないよ。


「だからさぁ、質問に答えてくれたら命は保証するって。アンタにも家族がいるだろ?こんな野蛮な国で命を落としたいのか?」


『……すみません』


 しまった。シャロは本物だった。


 俺はわざとらしく咳払いをし。


「んっほん!さて一般兵Aくん、今この城には何人の兵士が在中している?そしてあの不死身の兵士たちは……どこだ?」


「答えると――ひっ!!」


 俺の静かな圧は効果的面だったらしい。

 顔面を蒼白にし、兵士は引き攣った顔で。


「……つ、つい先日……兵の大半は諸国へ出た。いや、出ました……不死身の兵ってのは……【死葬兵ゲーデ】部隊の事でしょうか?」


「ゲーデ、それがあの兵士たち、聖女に魔改造された人たちの総称か」


『そこら辺はわたくしでも説明ができます』


 それもそうだな。

 なら、コイツに聞くべきことは。


「諸国へ出た兵士たち、それはダンドルフ・クロスヴァーデンの部隊か?もう一人、ライグザール大臣は何処に居る?」


「いや、クロスヴァーデン大臣閣下は単独、もしくは小数のはずです……諸国に出たのは、ライグザール大臣閣下の部隊で、おそらく反攻国の統率が目的だったかと」


 つまりは、今この城に二人の大臣は不在。

 残っているのは、コイツ等を始めとした不義理な兵士たちだけ。

 これはラッキーなのか。それともまんまと罠にかかったのか……分からんな。


「それだけ聞ければいい。女王は上だな?」


「……ああ。もう勝手にしてくれ……命が助かるなら、もうそれでいい」


 投げやりになる兵士。

 やっぱり、心の底からの忠誠を持ってはいないんだ、今の女王に。

 だから簡単に裏切れるし、必死に俺を止めようと……はしてたな一応。

 けれど無駄だと分かって、命を優先した。ま、それが普通なんだよ。


「俺の邪魔をしないんなら別に逃げてくれても構わねぇよ。ん、待てよ……そうだ、折角ならこの城から出てってくれねぇ?」


「ど、どういう……」


 静かな予感が俺に言わせる。


「アンタが信頼できる人たちだけでいいし、【死葬兵ゲーデ】って兵士はそのままでいいけど……俺、この城を破壊するから」


 木っ端微塵に、跡形もなく。


「は?」


『――えええええええええええええええええええ!?』


 簡単に言う俺、呆然とする兵士、そして一番驚愕きょうがくするシャロだった。

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