11−84【女王へ続く道3】



女王さいかいへ続く道3◇


 長々と話してしまったな。

 だけど歩いている内に、目的の場所が見えてきたと思う。


「あれか?倉庫に出る梯子って」


『はい。梯子近くの壁に、王家紋章が刻まれているはずです』


 近寄り確認。

 劣化と汚れで正確な形状は分からないが、刻まれた何かがあるのは分かる。


「これかな?」


『……はい』


 それじゃあ行こう。

 シャロが言うなら間違いではないだろうし、もしもシャロと女王が結託していて……これが罠だったとしても、俺は結局行くんだろうからな。


「ボロい梯子だな……【無限むげん】!」


 梯子を新品同然に再生する。


「よし頑丈。落ちる心配はないなっ……と!」


 カンカンと、小気味良い音が地下に響く。

 俺の靴底が梯子に当たる音だ。


『その魔法……いえ、能力でしたか。凄まじいですね』


 もう慣れたな、そういうリアクションも。


「だろ?」


 にしても結構な長さのある梯子だ。

 もう着いてもおかしくないんじゃないか?

 と、そんな風に思った矢先……見えたのは天井、ではなく床下だなこの場合。


「気配は……ないな、よし!」


 真上の倉庫内に人の気配はない。

 力を入れて開けようとするが……おんもっ!!


「んぐぐ……こ、この野郎、流石に倉庫ってか!」


 相当な重みがかかっている。

 長年使われていない地下だったらしいし、荷物とかスゲェ量が積まれてるんだろうな。憎たらしい事だ。

 だから、【無限むげん】で床を薄く小さく、面積を狭める。


「……ガッツリ荷物。これは、石だな」


 小さい隙間から触って確かめると、どう見ても石。

 石像じゃねぇか!


「【無限むげん】っ……てヤバ!嘘だろおい!!」


 グラァッ……


 その石像らしき荷物を最小まで小さくすると、雪崩のように。

 他の場所にあった荷物まで落ちてきやがる……蟻地獄かよ。


「【無限むげん】【無限むげん】【無限むげん】【無限むげん】【無限むげん】【無限むげん】!!」


 連打連打連打。名人も真っ青になるほどの勢いで能力を発動する。

 押しつぶされるわ!


 ガラガラ……


 小さくなった荷物たちは、俺と梯子の隙間から落ちていく。

 よかった、全部同じ素材の物質で。

 これが機械のようなパーツだらけの物体だったら、【無限むげん】じゃ無理だった。


「はぁ……こういう時はウィズの計算が便利だな、やっぱり。よっと、ふぅー……ほこりっぽいなぁ」


 梯子を上り、周囲を見渡す。

 荷物はまだまだあって、扉がギリギリ開くかといった感じだった。


「王国の清掃員さんは何をしてるんですかね」


『申し訳なく思います』


 そんな冗談を言いつつも、俺は【感知かんち】で周囲の警戒をしつつ行動を開始する。

 ゆっくりと扉を開け、まるで泥棒のように視線だけで左右を確認。


「ザルだなこれ……」


 まさかの誰もいない。

 【感知かんち】で分かってはいたが、王城の守備がこれでいいのだろうか。


『以前は、もっとしっかりと警備されていたはずなんです……』


 そうだろうけど。


わたくしが放棄した後、父が他界しました……』


「知ってる。噂では、当時のシャーロット王女が、国を憂いて弾圧したと。そう言われていたな……」


『……』


 事実は、シャーロット自身が手を下した……殺害なんだろう。

 そして母親である王妃は、娘に王政を任せたという事で、隠居をした。

 それが正式な発表だったな。


 そして王国は転落を始める。

 王国各地からの徴兵ちょうへい、聖女の実験、小国の吸収。

 その結果が……俺が今ここにいるという、因果だ。

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