11−77【悪辣の棘4】
◇
まぶしい……あついひかりがふりそそぐように、ぼくのからだをあたたかくてらす。あれ……ぼく?
ぼくのよびかた、いちにんしょう……って、ぼくだっけ。
あーそういえば、おかあさんとおとうさんにばれないよう、じぶんのことをいつわってたんだ。
うん?……さっきまでは、かんがえもまとまらなくて、ことばすらでてこなかったのに。
「……」
「――ミオ!ミオっ!!」
こえがきこえる……だれのこえだろう。
きいたことない、よな?
でも、ぼく……いや、おれのことをなまえでよぶなんて、そうおおくないはず。
「……っ」
く、こえでない……のどのおくがかわいて、だそうにもだせないよ。
「くっ、時間がないというのに!いい加減に起きて下さい!」
じかん?おきる?
おれ、ねてたの?
あーでも、ゆめをみてたかんかくがあるな。
ん?ちょっとまとうか、なんというか。
すこし、しこうかいろがこどもに……
「ぅ……あ」
「起きて!ミオっ!!」
さっきとちがう、このやさしいこえ……ききおぼえがある。
おれの、たいせつなひと……かけがえのないひと。
「……てぃ……あ」
ようやくことばがだせた。
そう、てぃあ……みーてぃあ……ミーティアだ。
「そう、私よ!」
なんでたいせつな……そんなひとの声をわすれてたんだろう。
あの黒い、あくいのことばをのうにうけて、やき切られたんだ。
ああ、そうだ、そうだよ……やっと、考えがまとまってきた。
思考もさっきまでの、直前に戻った……そう、あの言葉は、あの時俺を刺した女の子の声だ。
それに比べて、ティアの声は優しくて透き通ってて……最高だよなぁ。
「起きなさ〜い、イタズラしちゃうわよ?」
あれ?セ、セリスだと?
ティアじゃなかったのか!?
俺、まさか間違えた?やっちまった!?
「うふふ、ミオったら、相変わらずお寝坊さんだね」
な!今度はアイシアだって!?
いやしかし同じ方向から聞こえるし、同じ人物にしか思えないんだけど!
「……う、うぅ」
思い切って目を開ける。
光が指して非常に眩しく、薄っすらと視界に入るのは……青色の髪。
ほら、やっぱりティアじゃないか。
あれでも、ここまで色素薄かったっけ?どちらかといえば、水色の髪だけど。
「ようやく起きましたか。まったく……」
「……は??いや誰!!?」
寝たまま全力でツッコんだ相手は、俺の知らない女性だった。
だけど、誰かに……そうか、クラウ姉さんやレイン姉さん、レギン母さんにコハク。俺の家族に似てるんだ……そして、青系統の髪は。
「――思い出した」
これは、俺が望んだプランの具現化。
この美女は……ウィズだ。
ウィズが俺のプランを先行実行したんだ。
す、救われた……危うく、あの声に飲まれるところだった。
「時間がありませんミオ、意識が覚醒したのなら……さっさとこの悪意に対抗する手段を取って下さい。はい起きる!」
「すみません!」
ガバっと起き上がると、身体も元に戻っていた。
確かに首ボキしたと思ってたけど。
成功したんだな、【
その結果が……神格を得た人物、この世界だけの神となる。
このウィズのように。
「って……お前、手足透けてんぞ!」
「平気です。不完全な状態で実行したので、短時間しか
笑顔で透明になっていくウィズ。
なにこれ感動の別れみたいになってるぞ!
「ウィ、ウィズ!分かってるな。お前は――」
「はい、承知しています。ウィズはこの後、【アルテア】にて再度具現化をし、今回の黒の【オリジン・オーブ】による悪意の解析を行います。ですので、ミオは先程のような油断をしないで下さいね。次は助けられませんよ?」
気合を入れるために顔を叩く。
「ああ、分かってる。悪かったし……助かったよウィズ、サンキュ」
「いえ……それでは」
スゥゥゥゥ……とウィズの身体は粒子になって消えてしまった。
人格は、うん……もう俺の中にはないな。
となると、ウィズはミーティアやセリス、アイシアの中に行った感じか。
「マジで助かったな」
立ち上がり、姿を確認しながら独り言。
「さてと、結構な先回りをしてしまったけど、ウィズの神化は終わった。危うく廃人になる所だったが……ま、まぁ結果オーライだよな、うん」
そこは反省だ。
あの悪意の言葉を刻まれた時は、マジでヤバかった。
脳を焼き切られた感覚、子供に戻ったような……知恵が消失したような。
直接的な声じゃなくても、きっとあの黒い糸が脳や心の深部まで入り込むような事態が起こったら、ああなってしまうんだろうな。
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