11−76【悪辣の棘3】



悪辣あくらつの棘3◇


 キラッ……と、明るい空に光る輝星。

 それは、能力【星灯ほしあかり】の力。

 【極光オーロラ】よりは攻撃性もなく、個々の能力としては低い部類の能力だ……しかし、この【星灯スターライト】には特殊な効果がある。


 それが。


「星の光よ、悪しき邪の雲を……払え!!」


 その力は破邪の力であり、星の煌めきで悪しき心を癒やす、浄化の光だ。


 幾つもの能力の中には、反発しあって取得できない能力が数ある。

 その一つが、【極光オーロラ】と【星灯スターライト】だ。

 攻撃性に優れた【極光オーロラ】と、サポートに優れた【星灯スターライト】、ミオが既に【極光オーロラ】を取得している以上、ミオの中にあっても意味のない力……それらを託して、プランは完成する。


「――【矛盾叡智パラドックスウィズダム】!!」


 それは神格を得た能力。

 この世界で、【主神レネスグリエイト】だけが創り出すことが出来た……神技。

 本来この世界の能力は、単純な文字の組み合わせや、ただの単語という簡易なものだった。


 だけどミオの中で、それは安易でつまらなかったらしい。

 複雑ならば良いという訳ではないが、それでも……組み合わせで生まれる可能性や、進化を経て進む世界には、それでは駄目だと考えていた。

 だからこそ、ウィズもそれに従う。


 ミオが生み出し、新たな世界に広がっていくだろう能力たち。

 【主神レネスグリエイト】が生み出した能力の数など比にならないほど……きっとミオは創り出すに違いない。


「バカになるほどに……【叡智えいち】の逆説!!」


 矛盾、逆説……パラドックスに含まれる言葉。

 【叡智えいち】の矛盾、逆説。

 簡単に、暴言的に言えば……馬鹿なのだから。


 掲げた手から紡がれるのは、白き糸。

 魔力を全て使用した、救いの御手。

 計算や緻密とは真逆の、真っ直ぐなまでの暴力。


「これが、馬鹿になったウィズの――一撃です!!」


 馬鹿とは、なんて愚かな言葉だろう。

 だけど、それでいい。

 真面目に馬鹿をやろう……これから、永い永い年月をかけて。

 【アルテア】を守護する神となって。


「ミオォォォォォォ!!起きて下さい!!」


 倒れ伏すミオに向けて、白き糸で紡いだ御手を振り下ろす。

 黒き糸の魔物が群がるが、接触する瞬間……まるで太陽の光に飲まれ、日陰が消えていくように浄化されていく。


 シュゥゥゥゥゥ……


 光の柱となって叩き付ける。

 それ自体に攻撃性はなく、浄化……ミオの中に入り込んだ、悪辣あくらつの棘を打ち破る為の。


「ぁぁぁあああああああああっ!!」


 スゥ……と、出来たばかりの不完全な身体が透明になっていく。


 ウィズの魔力は最大値から八十パーセント

 言ってしまえば、全然足りません。

 だけど全力を尽くし、今を凌ぐ事だけに集中するのです……消えかかっている腕や足など……全部無視して。

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