11−40【女王国の闇1】



女王国リードンセルクの闇1◇


 ウィズが計算し、ロッド先輩によって追加された情報。

 それらを統合した結果、俺の中で一つの答えが出ていた。

 だから急ぐように屋敷をあとにし、ここに来た……【転移てんい】で訪れたのは、【ステラダ】だ。


「ウィズ、ティアに連絡。どこに居るか聞いてくれ」


『――了解』


 【コメット商会】の仕事で【ステラダ】に訪れている、ミーティア。

 そしてジルさんとジェイル、ミーティアの両腕だ。


「さてと、確か……」


 騒動が起き始めたのは北からだったな。

 【ステラダ】は国内の最南端、つまり北部から……思い当たるのは、【王都カルセダ】。あの女王が治める、女王国の首都だ。

 負の連鎖の発生源が【王都カルセダ】なら、間違いなくあの女王が関わっているはずだ。

 女王の部下や仲間が、黒の【オリジン・オーブ】を持つ人物……もしくは本人。いや、流石にそんな都合の良い答えはないか。


『――ミオ、連絡がつきました。こちらへ迎えに来るそうです』


「迎えって、忙しいんじゃないのか?」


『大変喜んでいますよ。疲れも吹き飛んだのではないでしょうか』


 そうなのか。

 俺が来てそうなってくれたのは嬉しいね、彼氏冥利に尽きる。

 もし仕事場にやって来た厄介彼氏のような対応されたら、心折れるし。




 少しだけ待つと、直ぐにミーティアがやって来た。


「ミオーーー!」


 手を振り、スカートを揺らし、大きな胸も揺れていて。なんだか途轍もなく目立つ気もするが。人目がないので許そう。他には見せたくないしな。


 だけど……少しだけ違和感。

 これはあれだ、無理してる時の。


『――独占欲ですね』


「特権だろ?――ティア!いきなりごめんなっ」


 ウィズに返事をしつつ、笑顔を向けてくれるミーティアへ謝る。

 いきなり来たのは本当だし、予定にはない行動だからな。


 ガバッ……と、飛び込んできたミーティアを受け止め抱き返す。

 優しい香りが鼻を通り――やべぇ興奮しちゃう。


「ううん、会えて嬉しい!しばらくは会えないと思ってたから……」


「あははっ、ウィズを介して声をかけてくれれば、いつでも来るよ」


 【転移てんい】で一瞬だし。


「本当は【ステラダ】に滞在中は、会わないつもりでいたのよ。だって夢中になっちゃうし、仕事に支障が出たら会員の人たちも申し訳がないから……それに」


 青い髪を撫でられながら、頬を染めてそんな事を言ってくれる。

 けれど、会わないつもりでいたのに会った。それは理由があるからに違いない。


「それにって。何か、あったんだな?」


 ミーティアは顔を上げ、真剣な顔になり。


「……ええ。借りてる場所で話すわ、今の【ステラダ】で起きている事と……ジル・・の事を」


「ジルさん?」


 その真剣な眼差しは、心配と不安。

 大切な誰かに降り掛かる災厄……それを払拭する為の求め。

 その思いを内包した、懇願に近いものだった……

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