11−37【血に残る遺産5】



◇血に残る遺産5◇


 グレンのオッサンがそそくさと退散した後すぐに、この王国領をまとめてくれているロッド・クレザースが降りてきた。

 後ろにはメイド服姿のキルネイリア・ヴィタールもいて、早速。


「ミオっ、先程の投影放送見ていましたよっ!凄いですっ」


 階段を駆け降りてきたイリアは、俺の手を取ってブンブンと。

 どうしたんだそんなに興奮して。腕外れちゃうぞ、俺の。


「お、おう……」


「許してやれスクルーズ弟。イリアは可能性を見出して興奮してるんだ……」


 呆れ気味のロッド先輩。

 それでも何だか、イリアの言うことも理解しているようなそんな感じ。


「ロッドさん、お疲れです……可能性、っすか?」


「ああ、なにせ――」


 ロッド・クレザースの言葉をさえぎり、興奮を隠せないイリアは。


「坊っちゃん、私は嬉しいのですよ!ミオがカミュちゃんにした事を、私たちもやっていただければ……きっと!」


「あ〜、そういう」


 「まぁそういう事だ……」と眉間にしわを寄せる。

 カミュに施した【覚醒かくせい】、その有用性を何よりも求めるのは、きっとハーフとして生まれた人たち。

 だからイリアは、その可能性に希望を持ったんだ。


 血に呪われ、さげすまれて生きてきた運命から、脱却出来るのならと。

 この【アルテア】にもハーフは少ないが存在する……正体は隠しているが、ウィズが判別出来るからな。

 その可能性のモデルに、イリアならなれるんだ。


「それじゃあ、イリアも受けてくれ――」


「――勿論!!です!!」


 るか?と最後まで言わせてくれないイリア。

 そうとう嬉しかったのか。しかしよく【覚醒かくせい】の可能性に気づいたな。

 しかし問題もある……ハーフにも、きちんとDNAに眠る能力が備わっているか……だな。


「そ、そか……それはよかった」

(試すのは今度だな、まずは他のケースも確認しとかないと)


 押され気味の俺だが、少し違和感も感じた。

 これはロッド先輩から……か?


「……ロッドさん、何かありましたか?」


「む。ふっ……スマン」


 機微に気付かれた先輩は自嘲気味に笑う。

 しかし気を取り直したのか、それとも俺にどう言葉をかけるか迷っていたのか。

 俺に聞かれたことで、言ってしまおうとなったらしい。


「【アルテア】で起きている騒動に、心当たりがある」


「え!?」


 まさかの情報。

 具体的な解決方法もなく、抑えつける事でしか沈静させられなかったこの騒動に、この人がもたらしてくれる情報。

 真剣な顔で俺を見て、ロッド先輩は意を決したように。


「ここではなんだ。会議室で話そう……イリア、紅茶と菓子を頼む」


「はい、坊っちゃん。ミオ、待っていてくださいね」


「あ、ああ……」


 菓子を食って話せる内容?

 いや、多分気休め程度、雰囲気的に重い話だ。

 その内容とは……いったい。

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