11−35【血に残る遺産3】



◇血に残る遺産3◇


 話を終えた俺たちは最後に、今後……すなわち数日後に行う予定の、【覚醒かくせい】を受けたい人たちの受け付けをどうするかを決めた。

 まぁ答えはすぐに出て、俺は疲れた身体を回復させてから、【アルテア】北部の王国領に向かった。


 因みに魔力の回復は、外の魔物を倒し、【焔煌えんこう】で魔力を回収するというチートを実行した。これで実状、俺は無制限に魔力を使えるって訳だ。


「――ミオさん!さっきの投影放送見てましたよっ!す、凄いですねぇ!」


「ど、どうもメイゼさん」


 王国領には新生【ギルド】がある。

 そこでは【ステラダ】からスカウトした人たちが多くいて、この人……メイゼ・エーヴァッツさんもその一人。

 【ステラダ】の【ギルド】で受付してた人だからな。


「それで今回は、いったい何用でしょうか?もしかして……放送と?」


「そう!その通りです。メイゼさんにお仕事の依頼ですよ」


 メイゼさんのリアクションを見るに、放送はまぁまぁ好評なはず。

 全部が全部歓迎ではないだろうが、まずは成功といったところか。


「お仕事ですか?」


「はい、他の【ギルド】職員の皆さんにもですが、後日塔で行う作業の受け付けを頼みたくて」


「なるほど。三国のエリアから人が来ることを考えれば……当然ですね」


 そういう事さ。

 まだ完全に大盛況とは限らないが、それでも【アルテア】に住む人たちの三分の一は来て欲しい。


「あの放送を見て興味を持った人たちが多ければ多いほどいいんですけど、流石に怖さもあるだろうし……まずは様子見でやるつもりです」


 俺は頭を下げると、メイゼさんも他の職員も笑顔でうなずいてくれた。


「詳細は明日にでも届けますんで、その際はよろしく頼みます」


「はい、お任せを」


 お仕事だと依頼すれば、皆も無理やりではないと納得してくれる。

 受けるも断るも自由だけど、人手は多いほうがいい。




 軽く挨拶をして、俺は次の目的地へ。

 【転移てんい】ではなく、歩きで。

 俺がやった事へのリアクシュンも見たいしな。


「こんちわ〜」


「!!……こ、これは管理者様!」


 俺がやって来たのは【ギルド】の近くにある、王国領を取りまとめる人物の施設。

 ロッド・クレザース先輩に用意した屋敷だ。


「しばしお待ちを!」


「ゆっくりでいいっすよ〜」


 執事は【ステラダ】からロッド先輩のお抱えだが、ここでの仕事はまだ慣れないらしい。慌ててミスされても困るからな。

 しかし屋敷の中には、まだ多くの人たちもいて……その一人が。


「――ん?お〜ミオガキじゃねぇか」


「……グレンのオッサン、いたのか」


 一人になった俺に気付いた朱殷しゅあん色の髪の中年。

 A級冒険者であり、【ステラダ】で魔物図書を経営していた人物。

 ここ【アルテア】では複数の施設を管理してくれている男、グレン・バルファートだった。

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