11−33【血に残る遺産1】



◇血に残る遺産1◇


 俺たちは場所を移動する。

 塔の二階にある、帝国の人たちが使える施設だ。


「コーヒー淹れてくるから、先に話しててくれていいわ」


「了解だセリス。ウィズ……セリスには伝えろよ?」


 セリスがコーヒーを淹れてくれるらしい。

 そういや地味に初めてだな。


「じゃあ座るか、疲れたしなー」


 どっこいしょ。


「おっさんくさいわよ」


「何も言ってねぇけどね!」


 いちいちするどい姉だ。

 しかし転生者なら全員言う可能性あるだろ、天命全うの長寿たちばっかなんだから。


「……聞かせてください、ミオさん」


 そりゃ本人が一番気になるか。


「ああ。それじゃあまず、カミュに幾つか質問な?簡単だから安心して」


「……はい」


 席に着き、セリスがコーヒーを持ってくるまでどこまで話せるか。

 カミュの答えによっては俺の仮説もくつがえるからな、だけどまぁ、答えはもう出ている気がするけどな。


「率直に、カミュは転生者じゃないんだよな?」


「……以前、この【アルテア】に来た時にも聞かれましたね。ですが、前と同じですよ、私はミオさんたちとは違います」


「うん。それは調べたウィズも、女神たちも保証してくれてるからな、念の為の質問さ……じゃあ次、これが本題。カミュのご両親のどちらかが……転生者の可能性だ」


「あ!……もしかしてそういう事?」


 クラウ姉さんは勘付いたようだ。

 その可能性に。

 ウィズも気付けたはずなんだけどなぁ。


『……』


「……う〜ん。転生者とかどうとか言う話は、したことがありませんけど……どうでしょうか」


 極力話さないタイプの転生者だった可能性もある。

 昔の俺のように、ロールプレイしているとかさ。


「カミュの能力――【朱雀すざく】は、四聖能力というそりゃあもうチートレベルの能力らしい、そんな強スキルが、転生者以外の人に付与されるはずはない。ってのが、ウィズの言いたいことだ」


 例えば似た能力は幾つもある。

 炎の翼だったり尾だったり、炎の操作系とか、色々と。


「更に、【朱雀すざく】は既にこの世界のどこかに存在しているって事だ。だからウィズはそこまで驚いた……同じ転生の特典ギフトが二つになってるんだからな」


「はぁ?じゃあその【朱雀すざく】が回収されて、また再配布されたとかじゃなくて?」


「そうなっちゃえばカミュが転生者になっちゃうだろ。俺の予測は……カミュのご両親、そのまた両親……果てはご先祖様の中に、【朱雀すざく】を持った転生者がいたっていう事だよ」


「……隔世遺伝って事?」


「この場合は先祖返りかな」


「……えっと、結局の所?」


「結論言っちゃうと、DNAの中に残ってたんだよ。カミュの中に、能力の残滓ざんしっていうか、素というか、根というか」


 エルフ族の女王、ニイフ陛下が言っていた。

 エルフ族の中にも、凄い能力を持った人物がいたって。

 それは地下に広大な空間を作り、守護者を作り、あの巨木を作った。

 そうして長い年月、繰り返し行われてきた転生の儀式……少しでも記憶が残っていれば、呼び起こすことも出来る。

 俺はもう、遺伝子すら【無限むげん】で操作できるんだから……

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