11−32【神の恩恵7】



◇神の恩恵7◇


 革新的な遺伝子の進化。

 この世界の人類が本来、誰もが持つであろう、己の中に眠る能力。

 その潜在能力の開花を、俺の能力――【覚醒かくせい】で強制的にうながし目覚めさせる。


 それが俺が決めた……世界を革新させる進化の道標。

 持つ者、持たざる者、それらの格差は今後も出てくるはずだ。

 未来の世界で払拭されるために、手始めにハーフを奇異の目で見る、くそったれな価値観を取っ払う。


 そして人が自由に生き、この世界が繁栄していけるように。

 魔物が存在し、常に危険と隣り合わせの世界。

 冒険者や軍人がいても、それでも戦えない人たちのほうが圧倒的に多い。

 だから命が失われる可能性を極力減らすには……そうさ、戦えるようになればいい。


「――ウィズ、そこまで慌てなくていいって」


 転生の特典ギフトである能力――【朱雀すざく】を手に入れたらしいカミュ・テレジアドールに対して、ウィズはいつものようにすることすら出来なくなっていた。


『――何故です!転生者しか取得できないはずの能力を……この娘は得ているのですよ!?』


 炎の翼をパタパタとさせながら、少女は不思議そうに自分の調子を確かめているようだった。自分でも分かってないんだ、何故……転生の特典ギフトが顕現したのかを。


『理解不能ですっ、これではなんのために転生の特典ギフトが存在するのですかっ、転生者だけが、転生者しか特別では――』


 まぁまぁウィズ、少しだけ待ってくれな。

 脳内のウィズを少し落ち着けて、俺は投影機に宣言する。


「……これが、能力だ。【アルテア】の皆にも、きっと自分の中に存在する。驚異と戦うための力、誰かを守るための力。望むなら、申請してくれた全員に施したいと思っている!近い内に、塔のロビーで受付を始める予定だ。是非来てくれっ!それでは、投影放送を終了するっ!」


 そう言って装置をオフにする。


「……すっごいわね炎の翼それ。私の光の翼と同等かしら?」


「……どうでしょうか」


 クラウ姉さんは興味津々だった。

 そして、俺のもとに歩むのはセリス。


「ウィズに聞いたわ。転生の特典ギフト……らしいじゃない?」


「どうもそうみたいだな。ウィズが慌てちゃって大変だったよ、中でうるさいし」


『――失敬な!!』


「おわっ!」

「ひっ!!」


 大音量で怒鳴るウィズ。

 だから落ち着けって、投影も終わったしちゃんと説明するからさ。

 そうカリカリするなよ。まるでアイズだぞ?


『……』


「やれやれ、それじゃあ答えわせといこうか」


「カミュ、クラウ、二人も聞いておいたほうが良いわ」


 情報は後で中心メンバー全員に共有するとして、まずはこの場にいる三人に、どうしてこの世界の現地人であるカミュに、転生の特典ギフトが眠っていたのか。

 それを、俺の仮説で証明しよう……それはきっと、誰もが持つ可能性。

 大昔から根付く転生者たちが残した、能力という名の……遺産さ。

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