11−31【神の恩恵6】



◇神の恩恵6◇


 ノォォォォォォォォォォ!!

 魔力消費エグい!【覚醒かくせい】に全部持ってかれる!【超越ちょうえつ】して、更には【無限むげん】が神格を得ているのに、魔力の消費が異常に早い!もうカスカスだぞっ!


「お、終わったぞ……カミュ、お疲れ様だ」


「……はい。え?へ、平気ですか?」


 青い顔でゲッソリする俺を見て。


「はぃ?何がかな?」


 十四歳の少女に怪訝けげんな目をされる。

 なぁなぁウィズさん、話が違いません?


『――【覚醒アウェイクニング】は、対象者の開放する能力によって魔力消費が変動します。つまりはそういう事です』


 マジか。それは想定してなかったぞ。

 その想定外の能力を得たであろうカミュは……自分の両手を何度も何度も開いては閉じて、確認するように。


「……これが、能力なんですね」


「そうだな、あっと……投影されてたんだった。報告しねぇと」


 俺は正面を向き、カミュを見えるように背を支えて質問をする。

 目眩めまいが凄いな、フラフラだ。


「っと――これで終わりだ。【アルテア】の皆、見ててくれたかな……これが、俺が皆にプレゼントできる、能力という力だよ」


 そう言うと、投影機が映す範囲内にクラウ姉さんとセリスも入ってきた。

 後ろに立って、味方になってくれているんだ。自分たちは賛成だと。


「カミュ、どうかな?身体に異常はないかい?体調とかどう?」


「……」


 一泊置いて。


「……平気です。ミオさんのしてくれた魔法は、凄く……凄く優しくて、暖かくて、心の底から信を置けると思いました。それに、この身体の奥底から昇ってくる感覚……自分に語りかけてくる情報が、私の力になってくれてるって、確信できます」


 投影機を見て、カメラ目線で語るカミュの言葉は、この映像を見ている人たちに届くだろうか。


「それじゃあカミュ、目覚めた能力を……披露してくれるかな?」


「――はいっ。お任せください、ミオさん」


 少し広めの舞台。

 一人で立つカミュの表情に、緊張感はないように見えた。

 さて、一体どんな能力に目覚めたんだろうな、このつよつよ少女は。


「……行きます」


 すぅ……っと息を吐き、カミュは。


「……【朱雀すざく】」


「【朱雀すざく】……?」


 その言葉と同時に、カミュの背から真っ赤な翼が生えた。

 メラメラと燃える炎は、俺の【煉華れんげ】とは違う……綺麗な炎だった。


『――まさか!!ですが、カミュ・テレジアドールからは一切の反応は皆無です!いったい何故!?』


 ウィズ、どうしたそんなに慌てて。


『【朱雀ヴァーミリオンバード】は……転生の特典ギフトです!ですがカミュ・テレジアドールは……絶対に転生者ではありません!』


 珍しく慌てるウィズの言葉は、確かに驚くことなんだろう。

 でも俺の中には、ある絶対的な自信があった。

 それはこの世界に、大昔から存在している転生者たちが残した、遺伝という遺産。


 これこそが、俺が世界に残せる……革新だ。

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