11−30【神の恩恵5】



◇神の恩恵5◇


 神秘的なまでの光景は、ミオ・スクルーズが発生させた数々の能力の小さな現象が折り重なって、幻想的雰囲気を【アルテア】全体に広げていた。

 【無限むげん】のオブジェクト操作、【豊穣ほうじょう】の自然干渉、【煉華れんげ】の炎、【極光きょっこう】の屈折光、【紫電しでん】と【電極でんきょく】の稲光、【焔煌えんこう】の魔力光など……自然現象では表せない表現の干渉で、ミオ・スクルーズはその状況を作り出した。


「……ホントに凄いわね、うちの弟は」


 その光景を間近で見守るクラウ・スクルーズも、【アルテア】の住人たちと同様におどろいている。

 何をするとは聞いていたが、ここまでの事になるとは思っていなかったのだ。


「それにしても、長い時間かけるわね。もう二分半は能力かけてるわよ?」


 クラウの横のセリスフィア・オル・ポルキオン・サディオーラス皇女が言う。

 その問いにクラウは。


「多分演出をしてるんだと思う」


「あ〜、そういう……この光景を見てる人たちに、これがどれだけの事なのか、そして自分たちもこれが受けられるって言う事を教えるためにね」


「そうね。多分、本当はすっごく早く終われるんだと思うわよ?」


「ふふふっ、でしょうね」


 ミオの思考を考えれば、大げさな演出をしていると理解は出来る。

 しかしそれが大いに重要であり、多大な影響を及ぼす事も分かっていた。


「でも……こんなの見せられたら」


「――まるで神だものね」


 クラウは不安だった。

 弟、ミオの未来が。


「……きっと平気よ、ミオにはクラウを始めとした、皆が付いてる。クラウが心配を顔に出したら、ミオも不安になっちゃうわよ?いつものように、小さい身体に大きな態度で、それでいてふてぶてしくていいのよ」


 安心させるつもりなのか、しかし若干の失言な気もするセリスの言葉。


「……私って、態度デカくてふてぶてしかった?」


 ジトーーーーー。


 そんな目でセリスを見上げるクラウ。

 だがセリスは絶対に視線を合わせようとしなかった。失言の自覚があるらしい。

 汗を頬から垂らしていた。


「まぁいいけどね。セリスやミーティア、アイシアも……イリアたちにも手伝ってもらうし、ルーファウスにレイナさん、ラクサーヌとか沢山……協力してくれる人たちは大勢いるもの。その人たちを裏切らないように……誠心誠意で尽くすしか無いのよね」


「それが、生きるということよ」


 【アルテア】の各地で、それぞれの思いを抱える人たちがこの神秘な光景を目撃し、しかしそれぞれ受け取り方も違う。

 だが、行き着く先が同じであればと……クラウは思った。


「そろそろ終わりそうね。カミュの能力……どんなのかしら」


「さぁ、意外とチート能力だったり?」


 「まさか」とクラウは言う。「そうよね」とセリスも笑いながら、ミオとカミュのもとに歩いていった。

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