11−27【神の恩恵2】



◇神の恩恵2◇


 家族、そして女神たち。

 それぞれがそれぞれの思いを抱え見守る光景は、【アルテア】に住む人たちも見届けていた。


「坊っちゃん、あの子に何をするんだ?」


「まさか会長が留守の間に……」


「そんな訳無いでしょ!バカ言ってんじゃないよ」


 ミオのことを今でも坊っちゃんと呼ぶのは、【豊穣の村アイズレーン】からの知り合いたちだ。

 冗談も言い合える中の人たちには、後顧の憂いもないような感情で見られるだろう。


 しかし、そうでない者も少なからずいる。


「……あの女の子、【カレントール】から来たとか言ってたよな」


「ああ。女王国の徴兵ちょうへい時に、最も抵抗してた町だろ?」


「そんな所から来た子が、どうしてあそこまで融通されるんだ?」


 カミュの印象も、そこまでいいとは言えなかった。

 ましてや十代前半の少女だ、その少女が激戦区の戦闘が繰り広げられる町からやって来て、警備隊や軍人と一緒の光景を目にしていれば。


「冒険者学生……だろ?あんな小さな子が?」


「管理者が嘘ついてる、とか?」


 そう見えないのは明白。

 だが疑念は持たれてしまう。それを弁明するか放置するかは、ミオの裁量にもよってくるだろう。


 しかし、この一年ミオたちがどれほどの思いでこの【アルテア】と向き合ってきたか、それを分からない者は……もういなかった。


「お、始まるみたいだぞ」


「家族を守るために……か」


 自分たちには関係ない。

 だから聞くこともしないなど、そんな事を述べる人は、この場にはいない。

 疑問は持っても最後まで。遮ること無く信を置き。そうして受け入れやって来た。


 【アルテア】が起きてからの実績が、村人たちから見るミオ・スクルーズと言う少年を、既に形作っていた。

 それはしくも、蠱惑の神が主神を敬愛する感情と酷似している事だと、後に気付くことになる……





「ミオ……ここが【アルテア】の、決定的な分岐点になるよ」


 そう呟くのは、一人でいるアイシアだった。

 【女神オルディアナ】として、【アルテア】でお披露目された新時代の女神。

 五人目の女神、慈愛の女神……その能力で未来をる。

 濃紫こむらさき色に光り輝き、脳裏でる光景は、まさしく投影された映像だ。


「再生の村、女神の村、塔の村……幾つも存在する未来の呼び名の中には、こう呼ばれる名があるの……」


 それは、どれほど遠い未来の光景か。

 今よりも遥かに広い【アルテア】、人も何百倍も存在し、建物は近代化。

 アイシア・ロクッサだけが、【女神オルディアナ】だけが知りうるその名は。


「――神の王……神子みこの王のくに


 神王みおくに

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