11−2【成人のクラウたち2】



◇成人のクラウたち2◇


 作業が残るミーティアを残して階を降りると、三階にてルーファウスとレイナが。


「あれ、ミオくんセリスさん、クラウさんも」


「よっ、ルーファウス。レイナさんも」


 ミオは、レイナを先輩呼びするのを止めた。

 冒険者学校が閉鎖されてもうすぐ二年、本来ならレイナは卒業している。

 進級出来ていればの話だが。


「あれれ、三人でお話かなぁ?ミーティアちゃんは?」


「ミーティアは商会の事でまだ話があるそうです。【ステラダ】から来てくれた商人たちも、【コメット商会】に協力的ですからね」


「今や近隣国で最大級の売上ですからね、ミーティアさんも忙しそうですし。そう思えば、春の小旅行はいい気分転換になったのでは?」


 引き合いに出される二人の小旅行。

 ミオは気恥ずかしそうに後頭部を掻きながら。


「い、いやあれはだな……」


「ふんっ、どうせ終始イチャイチャしてたんでしょ」


 クラウに刺さる言葉を言われる。

 しかし否定はしないらしい。実際……進展もあったのだろう。

 男女の仲は一日で変わる。ミオとミーティアが恋人になっても、一年以上なのだから。


「……いいじゃないか別に。やましいことは……してないし」


 サッ――と視線を逸らすミオ。

 それなりに関係を進めたというのは、きっと二人を見ている人物なら納得するだろう。


「あれだけレイン姉さんレイン姉さん言ってたくせに」


「そ、そんな言い方しなくていいだろ……」


 肩を落としてミオは項垂うなだれる。

 何かと言えば、クラウはそうしてからかってくるのだ。


「仲良いわよね……独り身の私たちからしたら、とってもうらやましいわ。ね?」


「そうね」


 セリスがジト目で見ながらニヤリと笑う。

 クラウも同意。しかし心が入っていない。

 からかうためだけに、思ってもいない返事をしたらしい。


「くっ……もう勝手にしてくれぇ」


 項垂うなだれた肩は更に落ち、ガックリと。

 このようにして、ミオはからかわれまくりだった。




 その後はそれぞれ別々に。

 ミオは成人式の為に村長……ルドルフのもとへ。

 クラウはアイシアたち女神の教会へ。

 セリスは帝国騎士たちの集まる施設へ。

 ルーファウスとレイナは塔に残った。


「あれ、ジェイル?」


「ん……ミオか」


 帝国領の村長宅に訪れると、入口から丁度出てきたエルフ族の青年、ジェイルがいた……ミーティアの母マリータと共に。

 ミオは思う。珍しいなと。


「あらミオさん、ごきげんよう」


「こんにちはお義母さん、具合の方はどうですか?」


 車椅子に乗るマリータは、村に訪れてから回復傾向にある。

 顔色も良く、筋肉もついてきた。

 体重も以前より増えているだろう。

 痩せこけていた以前より、遥かに健康そうだ。


「ええ、ミオさんのおかげでね」


 「そうですか」と、ミオは笑顔を見せる。

 そして今度はジェイルに視線を移し。


「で、アンタはいつまでニイフ陛下から逃げるつもりなんだ?」


「……」


 そうである。

 一年経っても、ジェイル・グランシャリオは一向にエルフ族たちに会おうともしない。

 【ステラダ】や【カレントール】といった協力者たちが村に訪れたのと同時に、エルフの里【フェンディルフォート】からも、同胞たちが訪れているというのに。

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