【再生の村】編

11−1【成人のクラウたち1】



◇成人のクラウたち1◇


 ミオが十七歳になったという事は、その姉クラウは二十歳。

 同じ年であるミーティアやイリアも、二十歳という事だ。

 騒がしく一年を過ごした村の面々に、個人個人で誕生日を祝う事はできなかったが、ここ最近の安定を考えてミオは言う。


「……成人式は?」


「……はぁ?」


 会議の最中にそんな事を言う弟に、厳しい視線を送るクラウ。


「そ、そんな睨む事ないじゃん」


 口端を引きつらせて、ミオは宥めるように言う。

 身振り手振りで。


「ほら、クラウ姉さんも四月で二十歳はたちだったろ?」


「そうね、ミーティアにイリアもだしセリスも、でしょ?」


「え、ええ……そうね。あまり実感ないけれど」


「私はもう二十一だけどね」


 ミオの言葉にクラウ、ミーティア、セリスが反応。

 クラウは四月、ミーティアは八月、セリスは五月だ。

 セリスは一つ年上だが、目まぐるしかった一年は同じ。

 イリアはこの場にはいない。


「結構いるだろ、昨年から今年にかけての成人も。クラウ姉さんが中心に、式ってまでは言わなけどさ……父さんや母さんも祝いたいだろうし」


「……う〜ん」


 クラウはやる気が無いようだ。

 そもそも前世でも、クラウは成人式に出席していなかった。

 いい思い出もないのだろう。


「私は……やってもいいと思うけど。ほら、レインさんとかも、なぁなぁになってたって言ってたじゃない?」


「そうね、【アルテア】も人数が増えて年齢層もバラバラに増えてる。そういう行事をやるのも、国の責任でしょう」


「……ここは国じゃねぇって」


 ミオは椅子に体重を預け仰け反り、セリスの言葉に異を唱える。

 因みにここは塔の内部。五階にある会議室だ。


「ぇぇ、いいじゃない別に。三国の多種多様な人種が集まる場所よ?」


 ニヤッと笑って机に肘を着き、今度は身を乗り出して向かいのミオに手をのばす。

 しかしカットイン。ミーティアだ。


「触れるのは駄目よセリス、皇女様でしょう?」


「あらミーティア、今の私はセリスフィア・オル・ポルキオン・サディオーラスではなくただのセリスよ?ちょっとくらい幸せのお裾分けをくれてもいいのではない?」


「駄目に決まってるでしょ。私のなんだから」


 照れもせずに宣言するミーティアに、何故かクラウが赤くなる。

 視線をミオに送ると、ガチ照れして顔を覆っていた。


「なんでアンタが照れてんのよ、普通は男が言うセリフでしょーが!」


「だ、だって!恥ずかしいだろそんな台詞!!そんなことよりどうすんだよ成人式!やるのやらないの、どっちなんだい!!」


 立ち上がって耳まで赤くしながら、ミオは話題を逸らすように言う。


「やるわようるさいわね!」


 理不尽にキレるクラウは、ミオに飛び掛かる。

 首にしがみつき背中に回り、スリーパーを。


「うぐぐぐぐ……このチビ姉ぇぇ……!」


 その様子を微笑ましく見るミーティア。

 そんなミーティアにセリスは。


「あれは良くて私が駄目なのはなんで?」


 フフンと笑うミーティア。

 その視線はクラウの胸だった。

 ミオの好み的に、セリスは範囲内だと、ミーティアはそう判断しているのだった。

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