エピローグ10−2【急速な発展】



◇急速な発展◇


 俺が悩んでいた時間は何だったんだろう。

 もっと早く相談すれば、ここまで深刻になる事もなかったかも知れない。

 正直言って、ハゲるかと思ってた。


「行くぞ」


「うん」

「ええ」

「どうぞ」


 アイシア、ミーティア、セリスの順に、俺の不安げな顔に笑顔と言葉をくれる。

 クラウ姉さんとイリアは帝国領の父さんたちに報告、ルーファウスとレイナ先輩は公国領に報告に行った。


 そして俺たちは、王国領である北へおもむいた。


「【無限インフィニティ】!!」


 かざした手は、手付かずの森林地帯。

 これで地形変動は二度目か。


『――大きいのはそうです。小規模を含めれば、三十二回に及びます』


 そんなにやったっけ。

 控えてた割にはやってるな……


「木々は【豊穣ほうじょう】で確保、地面は整地して行くぞ!地中にいる生き物は!?」


『――微生物程度です。夏なので生き物は地上に出ていますよ』


「なら丁度いい!一気に真っ平らにするっ!確保した木材は、そのまま建築する!住宅みたいな感じでいいからまとめてやってしまえ!――行くぞウィズ!」


『――了解』


 これが悩んだ末の答え。

 皆に協力してもらって得た、転生者としての答えだ。

 能力は惜しみなく使っていく、例え文明レベルが違うような展開になっても、俺はこの場所を守る。

 その為に皆に力を借りて……再始動だ、世界一の村!!





「凄いわね……ミオの【無限むげん】」


「ですよね、一瞬ですから」


「……この光景は近いかな」


「アイシア?」


 ミオの後ろの待機する三人の少女。

 セリスはドンドン整地されていく光景に感嘆とし、ミーティアはそれに同調。

 アイシアは紫色の瞳を輝かせて、一人納得していた。


「ミーティア、セリスさん。あたしは……あまりミオにしてあげられることがありません。いえ、出来なくなってしまいました」


「それって、女神だから……って事?」


「でもアイシア、ミオにはきっと貴女の力も必要よ?もし、私とミオとの関係に遠慮をしているのなら……」


 アイシアの真剣な言葉に、セリスもミーティアも己の推察をする。

 しかしアイシアは首を横に振る。


「ううん。あたしはあたしの考えが……出来上がってしまったから。今回だって、本当は何も言うつもりはなくて……多分、未練だったのかな」


「アイシア……」


 悲しそうに笑うアイシア。

 ミーティアには分かる。アイシアは自分から身を引いた。

 それ以上に優先するべき……世界というものの為に。


「未練があるなら、ミーティアさんをすっ飛ばすつもりでいいんじゃない?」


「す、すっ飛ばされるんですか……?」


 凄い事を言うなと、ミーティアは苦笑いだが。

 心做こころなしか嬉しそうだ。


「いえ。あたしはもう決めました。これは自分で選んで、見届けるために……この場所を、世界を」


 紫色の瞳は、もう戻ることはない。

 女神四柱に触れ、影響され、徐々に神格が芽生えていく。


「……いいの?本当に」


「うん。今回だけ……今回は、危うくミオが折れる所だったから。だから隣りにいたけど……その役目はミーティアのだから」


 ミーティアはギュッと右手を握る。

 その言葉の意味を、その重みを知ったから。

 ミオ・スクルーズと言う少年は、世界に名を馳せる男だと思えるからこそ、そう有りたいと、隣に並び立つ女性になりたいと思った。


「ええ。私……ミオが自分のしたいことを出来るように、ずっとサポートしていくわ――約束、する」


 そうアイシアに宣言する。

 しかし、そんな様子を見ていたセリスは。


「なら私、二人の間に割り込むけど」


「――えっ」


「ふふっ……」


 驚天動地のような表情でセリスを見やるミーティア。

 アイシアは吹き出して笑った。

 そんな宣告をしたセリスは、不敵に笑みを浮かべて。


「冗談よ。もしあの……世界に一番重要な男を捨てるようなら、遠慮なく奪っちゃうけどねっ」


 バチンとウインクをして、ミーティアの肩に手を置くのだった。

 そしてそのタイミングで、ミーティアへウィズから。


『――お気の毒です。所でミオの作業は終わっていますので、いつ振り向くか悩み始めています。なのでこちらからお声がけ下さい』


「……」


 何故かなぐさめられた。

 「はぁ〜」と、ガックリと肩を落とすミーティア。

 想い人ミオは、迷いが晴れたように能力を行使し、その作業を終えたようだ。

 ちらちらとこちらの様子を伺っていて、どうやら会話も少し聞かれただろう。


 だから、ミーティアは自分から声をかける。

 「ミ、ミオ〜」と若干の上擦り声で。


 そして……既に【無限むげん】で整えられた地面は数kmキロメートルに及び、塔の村全体を見ても、以前の【豊穣の村アイズレーン】の十倍。

 女王国の【ステラダ】よりも大きくなった領土。

 このようにして急速に、そして急激に……塔の村は発展していくのだった。

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