10−87【解決策3】



◇解決策3◇


 帝国皇女セリスフィアが塔の村にもたらしたのは、総勢三万の帝国民。

 帝国兵や一般人、職人に商人、多種多様な賛同者たちが来てくれたんだ。

 だけど……俺の内心は……複雑だった。

 このままだと、また人が増える……これ以上増えたら、もう生産が追いつかない、十万の命を救っても、飢えてしまう。


「それじゃあ西の領土を使わせてもらうわね!ゼクスっ!!」


「……あ、はい」


 いたのかゼクス・ファルゼラシィさん。

 木陰からげっそりして出て来たゼクスさん……また能力を使わされたんだな。


「後方にいるロイドに伝えて、西と……北も少し借りてそこに帝国の居場所を作るからって」


「はい殿下――【瞬光しゅんこう】」


 セリスの命令を聞くと、ゼクスさんは光となって消え去る。

 光速で移動するのは、三万の人たちの最後尾。

 まだ会ってない【帝国精鋭部隊・カルマ】の一人、ロイド・セプティネと言う人に伝えに行ったらしい。


「セリス、あまり勝手な……」


「さ、移動しましょうか」


「お、おい!」


 俺がこんなに苦労してんのに、どうしてそこまで!

 内心の苛立ちが……きっとこの場の誰もが感じただろう。

 だけど、それは俺の勝手な気持ちで、皆が皆、もう答えが出ていたんだと……俺は知る事になる。





 一人戸惑うミオを置いて、私は皆を引っ張り塔の内部へ。

 なぜ、ミオがそこまで戸惑っているのか、私は理解できなかった。

 戦力の増強と村資源の充実、それは何よりも優先される事であり、三国が協力(現在は帝国と公国の二国だが)しあって成すことが出来る歴史の転換期……だと私は思っている。


 だからこそ、ミオがここまで消極的になっていることが理解できない。

 いや……違うわね、消極的というか、これは。


「――待ってくれってセリス!ちょっと話を聞いてくれ!!」


 後ろから声を荒げてやって来るミオ。

 声に感情が乗っている……これは怒り、そして怯えだ。


「なぁに、あの数に怖気おじけづいたの?」


「――!!そ、そんなんじゃあ……」


 顔が青い。これはほぼ……当たりなのね。

 でもどうして、今までは強気な姿勢と精神で、皆を引っ張ってきたはず、今更何に??


「じゃあどうして、そんなに怯えているのかしら」


「「「え」」」


 私の言葉に驚いたのは、ミオの姉クラウさんにライネ、イリアさんの三人の少女。

 ミーティアさんとアイシアさんは、特段驚いてはいないが……少し悲しそうだった。


(皆、分かってなかったか……でもこれってきっと、期待?)


 ミオには皆が期待していたはず。

 やってくれると、ミオ・スクルーズなら出来ると……無意識に。

 今まではそれで通ってた、じゃあこの少年の変わりようは何?

 一体どうすれば、あの強気な少年が……ここまで怯え、今にも泣きそうな顔をするのだろう……

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