10−86【解決策2】



◇解決策2◇


 何の通達もない状況で突然現れたセリスこと、帝国皇女セリスフィア・オル・ポルキオン・サディオーラス。

 そのドヤ顔は、もしかしてこの状況を知っている?


「随分と久しぶりに感じるわねっ、見ない間にこんなに発展して、皇女として嬉しい限りだわ!!」


「な、なんで急に!驚くだろっ!」


「本当ですよ……」


 ライネすらも驚いているのだ、これは連絡なしに来たな。

 それにしても、なんていいタイミングで来てくれたんだ。


「それは勿論、驚かせようと思って来てるもの!」


 ドヤるなって、こっちはそれどころじゃないんだ。

 しかしそんな俺の空気感を読んだのか、セリスは。


「まぁ……冗談は置いておいて、外に部下を待たせてるの」


「部下って……ゼクスさん?」


「……ま、そんなところね」


 セリスは出口へスタスタと歩いて行く。

 釣られるように俺も……ライネはそんな俺の耳元に。


「多分……驚きます」


「え」


 呆れたような、そんな声音で俺に言う。

 ゼクスだけ……じゃないとか?

 ああ、【帝国精鋭部隊・カルマ】の他のメンバーとかかな。

 しかし……この数十秒前に頼もしいと感じた俺の気持ちは、一瞬で切り替わってしまう――悪い意味で。




 眩しさに耐えかねて、外に出た俺は目を細めた。

 実に二秒間ほどだったが、目を開けた光景に……俺は。


「……は?」


 その光景は、人だった……人混み、集団、大混雑。

 どう表すのが正しいのか、到底視覚だけでは判別できない……大勢の人だった。


「こ、これは……セリス!?」


「なぁに?」


 首を傾げてとぼけたふりをするセリス。

 これあれです、絶対対抗してる……公国に。


「これまさか、帝国の??」


 まさか、なんて疑問じゃない。

 これは確信だ。

 帝都に帰ったセリスは、この為に。


「そう!私が帝都に戻り数ヶ月、皇帝陛下と何度も何度も協議を重ねて実現させた!私の一世一代の政策!!……これこそ、帝国の力よ!!」


 両手を広げ、その圧倒的な数の人たちを俺に示す。


「な、何人いるんだこれ……」


「この者たちは、私の考えに賛同した人たちよ。多くは帝都に住んでいた住人、それ以外は、帝国中から募集したわっ!」


「募集って……それでこの量かよっ」


 俺も驚くが、塔の中から外の様子に気付いたクラウ姉さんたちも、外へ出てきて……


「な!なにこれっ」

「ぅわっ……す、すごい人ですね」

「……凄い、でも、これ」

「あぁ、そういう事だったんだ」


 クラウ姉さん、イリア、ミーティア、アイシアの順に。

 更に続いて出て来たレイナ先輩とルーファウス。


「うはぁ〜すっごいねぇ!」

「まさか、この方たち……帝国の民」


「そうよ!ふふん……公国には負けてられないからっ」


 マジかよこの皇女。

 俺が人手の事で悩みに悩んでいる時に、更に人を増やしやがった……ど、どうするんだよこの人数!!今の備蓄じゃあ、こんな……


「ミオくん、殿下はただ賛同者を連れてきた訳ではありませんよ」


 ライネが隣で。


「それは分かってるさ。だけどな……この規模は」


 十万人をどうするか考えなければならない時に、更に続いてこの人数。

 俺に御せるわけがないんだよ。


「総勢三万、一般人から職業多彩な数々の面々、それに帝国兵。この塔の村に参加させてもらうわっ」


 セリスは続けて説明をしてくれているが、俺は自分の手にある宝玉の事で手一杯だ。


「三万人……凄いわね」


「はい、しかも多種多彩な方たちも!」


「それじゃあ商人とかも……」


 クラウ姉さん、イリア、ミーティアの感想だ。

 一方でアイシアは、俺の側に来て。


「ミオ、大丈夫だよ。ミオはミオの出来ることをすればいい……それだけだから」


「アイシア……そんな事、言ってもな」


 眉を寄せて、俺はしかめっ面だっただろう。

 気付かなかったんだ。自分に出来ることの意味を……アイシアの言うその意味を。

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