10−85【解決策1】
◇解決策1◇
手を
季節は秋に向かい、夏の終わりが差し掛かるような、そんな八月のある日。
――ピキリ。
「!!」
「ミオ?」
「どうかしましたか?」
外で塔の外壁作業をする俺とクラウ姉さん、そしてイリア。
俺の些細な反応に、クラウ姉さんは敏感に気付いた。
「あ……いや」
違和感はポケット。
いつも忍ばせている、十万人の魔力宝玉だった。
ヤバイ……そう思って取り出す。
「……ひ、
冷や汗をかいた。
だけど今の感覚、完全にヤバイやつだ。
「なに?もしかしてヤバイ系?」
「もしかして、それ……ですか?」
クラウ姉さんとイリアは作業を中断し、俺に寄ってくる。
高所だし狭いのだが。
ミーティア以外の主要な仲間たちにも、事情を話してあるし相談もしている。
ただ、具体的な解決には至っていない。
その為に向けた行動はして来たが、それでもまだ時間が足りていなかった。
「えっと、前に話した、これなんだけど」
見せる宝玉に、二人は真剣な顔で。
「時間が来ちゃったのね」
「じゃ、じゃあまさか、誰かが……?」
消えてしまった。そうなのではとイリアが顔を青くする。
「い、いや!まだ、まだ消えてはいない……ただ、悪い報告的な、タイマーが来た感じ……かな」
「なるほどね……こうして時間をかけて準備はして来たけど、そうも言ってられない状況になったと、そういう事ね」
その通りだ……
「ま、まずは降りませんか?話はそれからでも」
「そうだな、危ないしな」
俺たち三人は高所作業を中断し、塔の内部の入る。
中は随分と整えられていて、もう立派なの受付だ。
「あれ、ミオくん?二人も、どしたの?」
公国領の受付場でなにやら仕事をしていたレイナ先輩が俺たちに気付く。
「いやちょっと急用が」
「ちょっとじゃなくてかなりでしょ。私、アイシア呼んでくるから!」
「そうですよ、急ぎましょう!それじゃあ私は……ミーティアを呼んできますね!」
慌てて、二人共塔を掛けていく。
一階は【コメット商会】や、三国それぞれの総合受付場となっている。
二階三階には、帝国と公国の主要な人たちが集まれるような、そんな場所が複数用意してあるのだが、今日はアイシアもミーティアもここにいた。
アイシアは今や、女神候補として村の有名人。
女神四柱に付きまとわれて……じゃないが、忙しそうにしている。
ミーティアは現状、王国人の代表だ。イリアもいるが、どちらかと言えばそう、サポート的立場だし。
「……大変そうだねぇミオくん。私もルーを呼んでくるけどさ」
レイナ先輩は弟のルーファウスと、公国組の代表だ。
表立ったリーダーはルーファウスだが、こうして弟を支えている。
この前の防衛戦も、えらく活躍したそうだよ。俺は知らないけど。
「すみません、助かります」
そして誰もいなくなる。
まるで最初から一人だったかのように、ロビーが静まった。
だから普段は声にしないような心の中の言葉も。
「なぁウィズ、さっきのピキって感覚……」
『――一月掛けて精査した情報から元に、最初期に魔力変換された人物たちの、寿命が来たようです。数は三十』
三十人が、このままだと消える。
だが、それくらいの数なら……準備した居住区で事足りる。
「――ミオ君っ!!」
「!?び、びっくりした……ライネか、どうした?」
考え込む俺の背後にかかる声。
それは汗を掻いたライネ・ゾルタールだった。
「じ、実は……戻ってきたんです!あの方がっ!!急に!!」
「は……は?」
戸惑いのような、焦りのような。
そんなライネの更に背後から。
「――そういう事ね。お久しぶり……ミオっ」
明るい声、スラッとした体躯。
「……セ、セリスっ!?」
自信満々にドヤ顔を見せる、能力――【
セリスフィア・オル・ポルキオン・サディオーラス殿下、その人だった。
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