10−84【十万の孤独7】
◇十万の孤独7◇
十万人の魔力が凝縮されて出来たこの魔核。
今直ぐに解放する事も出来る……出来るが、そう簡単に出来ないというのが現状である。
「この人たちを解放した責任って、俺に来ると思わない?」
俺の言葉にミーティアが首を傾げる。
「この人たちの?」
と言うか、村全体にかかる負担?
「解放したら、この人たちはどこへ行く?各々で村や集落に帰る?多分……それは無理だ」
各地から魔力に変換されて。
例えば……数十人しか存在していなかった集落なら、もう存在しない可能性もある。赤さん時代の村がそんな感じだったしな。
調べれば、きっといつの間にか消滅している村や集落があるはずだ。
「……それは、そうかも知れないわね」
ミーティアは考えるように、髪の毛を指先でクルクルと。
俺だってこの塔の村の責任者だ。無責任に十万人なんて数の人を増やしてみろ、絶対にいざこざが起こるに違いない。
絶対的に善人が十万人なら文句はないが、そんな訳はない。
十万人いるってことは、少なく見積もっても一万……くらいは悪人もいるかもしれない。
「勿論さぁ、このままじゃあいけないって思うよ。なんたって十万人だ……命だ。それを放置すれば自然消滅、それじゃああまりにも無慈悲だ」
「うん」
責任を取る……だなんて簡単に言えない状況。
それでも十万人の命を、俺が握っている……文字通りだ。
右手に乗る軽い宝玉が、物凄い重みに感じる……いや、実際に重いんだ。
「解放したとしても、受け入れるのは……現状難しい」
「【トリラテッサ】の半数の人たちの住居を整えるのにも、ミオが……だものね」
「ああ。だからきっと文句が出てくる」
そうだ。多くの問題があるにせよ、一番の問題は場所と食事だ。
【
いきなり現れて住居も食事も手厚く用意されていたら、これまで頑張ってきたのが馬鹿らしくなる……多くはいないだろうが、少なからず出てくる。
実際文句も受けた、説明で納得はしてくれたけど、今回は数が異常値だから。
【トリラテッサ】の半数二百と、どこぞの知らない十万人じゃあな。
「林業を始めてくれた方たちの負担も、土木工事をしてくれる方たちの負担も大きいわね」
「そうなる。東も西も南も、いい感じに開拓出来てるけど……数が足りないから」
だからと言って、十万人の人を解放して手数にするのは非道だ。
いきなり復活させて、身勝手に働けと言われるのもな。
「少しずつって言うのは、難しいの?」
「いや、難しくはないけどさ、そうして時間をかければかけるほど、消滅する人が出て来るらしいんだ……順番に、さ」
今もこうして手持ち無沙汰状態では同じだが、解決策がない以上、勝手なことは出来ない。
「時間はそうないのね……急がないと、命が失われると」
「そう……だな」
考えないと。
帰る場所のない、十万人の孤独が安心できる方法を。
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