10−80【十万の孤独3】



◇十万の孤独3◇


 俺たちはノワさんとフェルドさんを連れて【転移てんい】で村に戻る。

 背にフェルドさんを背負い、両手にクラウ姉さんとライネ、二の腕に掴まるノワさんと。


「え、あ!!ミオくん!お帰りなさ……い?」


「おールーファウスいい所に、ただいま。留守を任せて悪かったな、助かったよ」


 村に戻ると早々に、ルーファウスが出迎えてくれたが。

 俺の背で眠るフェルドさん、隣りにいるノワさんを視界に入れて不思議そうにする。

 ま、まぁね、事前に伝えていたスカウト要員は、狸のお姉さんと市場の老夫婦だったから。


「はい!特に変わりはありませんでしたよ!それで、えっと……」


 笑顔から一転、困惑するルーファウス。

 そんなルーファウスに、ノワさんが一歩前に出て。


「俺はノワ・パレーヴァという、冒険者だ。こっちはフェルド・ジューク、俺の相棒だ……【トリラテッサ】で共にミオ君に助けられてね、これからお世話になることになった」


「そうなんですね」


 あれー?ルーファウスにはクラウ姉さんが【ルーマ】で報告していたはずだけど。

 俺は後ろにいるクラウ姉さんに視線を送る。すると。


「したわよちゃんと、ミーティアに」


 との事だ。


「じゃあまだ報告できてなかったのかな、忙しいもんな」


「そうでしたか。ミーティアさんには今日会っていないので、僕も忙しく行ったり来たりしていたので……それで」


 ルーファウスも忙しそうにしてたし、ここにいたのも偶然っぽかったし。

 これはすれ違ったな。

 ウィズでやれ?そうだな……確かに。


『――既にやっていますが。ミーティアから他者には伝えられませんのであしからず』


「ま、まぁいいさ。とにかくこの人を休ませたいんだ、今どこか空いてるかな?」


 視線で、肩越しにフェルドさんを。


「えと……【豊穣亭ほうじょうてい】の清掃が終わったと、聞いてますけど」


「よし、じゃあそこで。姉さん」


「分かったわ。私は報告ね……はいはい」


 疲れてるのに悪いね。

 それでも言わずとも行動してくれる、頼りになるよ。


 スタスタスタ……


「あ、じゃあ私も行きます……待ってクラウ!」


 ライネもクラウ姉さんについて行くらしい。

 そっちはそっちで報告とかあるだろうしな、俺がどうこう言えることじゃない。


「じゃあ行きますか、こっちですよ」


「あ、ああ」


 新しい【豊穣亭ほうじょうてい】。

 そろそろこの塔の村を認知して訪れる人も出てくるはず、急いで建築したんだから、客入りも期待したいな。





「よっこいしょ」


 宿の一室を貸すことにして、フェルドさんをベッドに寝かせる。

 別に言う必要ないのに掛け声出るの、なんでだろうな。


「ミオ君すまない、何から何まで」


「いや、いいんすよ」


 こっちにも都合というか、目的があるからな。

 いずれは素直に話すけど、今はフェルドさんの女神関連が優先だ。


「じゃあ、フェルドさんの快復を待ってもらって……それからゆっくり話しましょうか。俺はまた【トリラテッサ】に行くんで、何かあれば宿の従業員に言って下さい」


「【トリラテッサ】に?」


「はい。ペルさんとか気になるし、開放された住人にも話を聞いてみたいんで」


 魔力に変換されている間の事とか、なにか分かるかもだしな。

 それにスカウトもだし、町の惨状を見た人たちがどう思うかも聞かなければ。

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