10−70【夏の焔7】



◇夏のほむら7◇


 冒険者ノワ・パレーヴァさんと林を移動すると、なんとも子供が作ったような簡素な秘密基地に辿り着いた。前世のガキの頃、段ボールで作ったの思い出すなぁ。


「あ!ノワおじさんっ!」


「おいおーい、俺はまだ二十二なんだが……」


 小屋の前に立つ少年。

 十代前半だろうその男の子は、木剣に木盾を装備していた。


「おれからすればおじさんだよっ!へへへ、どうだい!ちゃんと言われた通りここを守ったぜ!?」


 鼻下を指で擦りながら、わんぱく坊主のように言う。

 ノワさんは、ここが安全だと分かっててこの子に任せてるんだ。


「ああ、偉いぞ!俺も味方を連れてきたんだっ、これで皆を助けられるっ!」


 「へへへっ!」と笑う少年と、俺たちを既に味方と断定しているノワさん。

 いやまぁ、事情が事情なら手伝うのだが。


「……いいわよね、男の子」


「……ですね」


 少年を見て、クラウ姉さんがボソリと言った。

 何故か同調するライネ。


「……ぉぃぉぃ」


 昔からそうだとは思っていたが……き、聞かなかったことにしよう。

 きっと可愛いものを愛でる気持ちだ、動物感覚さ。

 うん、そうに決まってる。


「おねえさんたち、あいつをやっつけてくれるの!?」


 このガキ……俺より後ろにいる二人に声かけやがった。

 なんだその目線!見てんじゃねぇよ俺の姉と友達だぞ!


「……そうね、話を聞いてからだけど」


「はい、困っているのなら。協力させてもらうわ」


 俺は急激に帰りたくなったけどな。


「ミオ君……だったか、悪いな。この子は親御がいないんだ、許してやってくれ」


「あ、いえ」


 ノワさんにさとされた。

 いやいや、鼻の下伸びてんるんだよ、目線が胸見てんだよ(ライネの)。


「中には他にも?」


「ん、ああ。十数人いるよ……そうだな、中で話そうか。君たちが協力してくれるのなら、今言ったあいつ・・・も……きっと倒せる」


 あいつ。それが町の人間を根こそぎ消した、今回の騒動の大元か。

 このガキも、中にいる人たちも被害にあったのか。

 それなら仕方がない……のか?エロガキの無垢な性的興味を、許さねばならないのか?


「こっちだよ、おねえさんたち!」


 クラウ姉さんとライネ両方の手を引いて、少年は秘密基地(小屋)の中に入っていく。俺はそれを見てるだけだ。

 落ち着こう……あれは愛玩動物あれは愛玩動物。


『――されているのがミーティアだったなら、ミオは間違いなくキレています』


 おい。想像しちゃうから止めろ、それになんだか俺が心の狭い小物みたいじゃないか。許す度量もあるさ、多分……きっと。


「さぁミオ君、説明させてもらうよ……【トリラテッサ】に人がいない理由、そして俺が君たちに協力を要請したい訳を」


「……はい」


 ノワさんも小屋の中へ入っていく。

 後ろ髪を引かれるような感覚もあるが、俺も続いて中に入るのだった。

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