10−59【天界への階17】



◇天界へのきざはし17◇


 会議室に入ると、既に案内され終わったエルフ族の面々……女王陛下ニイフ・イルフィリア・セル・エルフィン様とお付きのエリリュア・シュベルタールさん、そして護衛であるであろう二人のエルフ……おお、ニュウさん――って鎧じゃねぇか!!

 正装だったらドスケベ衣装だったのに……ってのは冗談にしておかないと、ティアの視線が痛い。

 もう一人も女性だった。短髪で眠そうな目をした、腰に二本の短剣を下げたエルフの女性。


「――来たようだなミオ、ルドルフもよく来てくれた」


 ジルさんが立ち上がって、父さんにもきちんと接してくれる。

 父さんはを「いえいえ」と緊張を隠せてもいなかった。顔青いからな。


「はい、お待たせしました。じゃあ父さんはそこに座って」


 会議室ならではの長いテーブルが用意され、奥に父さんを座らせる。

 客人であるエルフ側は入口に近い場所だ。


「――久しいですねと言おうとしましたが、随分と縮みましたね、【女神ウィンスタリア】」


「むっ」


 ちょっとニイフ陛下、先手を打つのは座ってからにして下さい!

 ウィンスタリア様もムッとしない!一分前の言葉忘れましたか!?


「陛下、詳細はまず、公子ルーファウスに聞きましょう」


 ジルさんがそう言ってうながす。

 ルーファウスはビクッと肩を震わせた。


「は、はい!」


 ああもう、勝手に進行しちまった。

 俺は急いで父さんを村長席に座らせて、ウィンスタリア様をルーファウスの隣に。

 ちょこんと座ってはくれたが、どことなく力が入っていた気がした。


「――エルフ族の長よ、またこうして会えたことを喜びたいが……すまんな、ウチはそなたの知っているウィンスタリアではない。数で言えば……五代目だ」


「……」


 ウィンスタリア様もアイズレーンやイエシアスと同じ、次代に力を継承する女神だ。

 エリアルレーネ様だけが、記憶をも継承できる存在。

 よって、今のウィンスタリア様はまだ百歳前後ということになるのか?


「そうですね。侵攻は約百年ですが……我々が対面したのは七百年も前の事、ですが侵攻は……」


「うっ」


 そういう事か。

 つまりは侵攻時のウィンスタリア様は……今のウィンスタリア様だという事実。

 誤魔化そうとしやがったこの女神。


「――へ、陛下……まずは弁明をさせていただきたくっ」


 ウィンスタリアの隣のルーファウスが、焦ったように立ち上がって。

 しかしニイフ陛下は。


わたくしが聞いているのはそなたではない」


「うっ……す、すみません」


 静かな圧だった。

 里での優し気な雰囲気などかなぐり捨てたような、そんなニイフ陛下の言葉にルーファウスは座り直す。ウィンスタリア様は……あわあわしておる。


「「「「……」」」」


 空気が重い。

 歴史の問題は、どこの世界でも最重要だと再認識だ。

 だけどここではそうはさせない。修復するんだ、未来のために。


「ニイフ陛下」


「なんでしょう、ミオ・スクルーズ殿」


 こういう時は冷静なやつが必要になる。

 そしてこの場に限っては、それは俺とミーティアなんだからな。

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