10−58【天界への階16】



◇天界へのきざはし16◇


 迎賓館げいひんかんに連れてくる人物は、現状のこの村(帝国領土)の村長である俺の父ルドルフ・スクルーズ。

 でもってクラウ姉さんだが……女神三柱に絡まれて死ぬほど機嫌が悪かったので、後で話すことにした、エルフの女王に会いたがってたけど、ここは触らぬ姉に祟りなしだ。


 そして【救世神ウィンスタリア】。

 公国にあがめられる幼女神を拉致……ではなくご同行願い出た。


「わはははっ、まるでウチが荷物のようだぁ!」


「ゴネるからですよ、悪いとは思ってます」


 俺は小脇に抱えるウィンスタリア様の笑顔に安堵する。

 よかった笑ってくれて、不敬もいいところだからなこんな姿。


「じゃあ父さんもいいかな、一応立場的にさ、帝国領土の長だからね」


「……あ、ああ。で、でも本当に……父さんでいいのか?ミオが責任者になったほうが……」


「今度は父さんの仲間も増えるからさ、王国領土と公国領土にも村長を立てるんだし、それまでファイト!」


 事実上の責任者は、女神と転生者だろう。

 それでも、建前上の看板は必要不可欠になる。

 ましてや敷地が数倍以上に膨れ上がったんだ、管理をするのも俺たちだけでは無理だっての。


「し、しかしだなぁ……」


「弱気は駄目だよ父さん、俺の……俺とクラウ姉さんの親なんだから、出来るに決まってるさ!」


「!……そ、そうだな。四人子供を育てたんだ、自身を持て!」


 そうそう、子供四人育てるのは勿論大変だ。

 子育ては母親が中心だろうという正論は止めてくれよ?これでも昔よりは遥かにしっかりとしたんだから。


「じゃあ移動するからね、ウィンスタリア様も」


「おお」


「お〜!!」


 父さんの肩に手を乗せて気付く。

 いつの間にか、父さんの身長に追いついていた。


「ど、どうしたミオ?」


「あ、いや!なんでもない、じゃあ【転移てんい】!」


 前世の親なんて顔も思い出せなくなって来ている。

 親を超すだなんて、いずれは来る遠い未来だって思ってた、まだまだ到達しない長い歴史。でも、俺もこうして異世界で十六になって、もうすぐ大人になるんだと実感した。




「――はい到着。迎賓館げいひんかんの入り口だねここは」


「相変わらず凄いな、ミオの言う能力?ってのは」


 元々は別の転生者の能力だけどな。


「まぁね。ウィンスタリア様、よろしいですか?」


「……」


「ウィンスタリア様?」


 自分の手を見つめ、ウィンスタリア様は静かになっていた。

 なにか考え事か?真面目な顔を始めてみたぞ。


「――あ、なんでも無いぞ!?わははっ、それじゃあルドルフよ、ウチを案内するがいいぞ!」

(……ウチの魔力を肩代わりしたか、つまりは神の魔力と同等になったという証。末恐ろしい男なのだ……ミオ)


「か、かしこまりましたウィンスタリア様!」


「会議室にお通ししているはずだから、父さんはリラックスね。ウィンスタリア様は変に挑発するような発言禁止でお願いしますよ、歴史は詳しくないんでなんとも言えませんが、問題は少なく進行したいので」


「……うむ」


 なんでテンション下がるんだよ怖いなぁ。


 父さんを中心に、ウィンスタリアを伴って中に入る。

 中では【ルーガーディアン】の面々が、慌しくバタバタしていた。

 分かりやすく動揺しているな……ルーファウスの緊張が移ってるぞ。


 長い歴史の一つ、公国侵攻事件。

 その詳細が判明されるんだ、緊張は分かる。

 ましてや当時の中枢人物の孫であるルーファウスとレイナ先輩、そして当事者のエルフの女王とその娘ジルさん。


 出来れば穏便に済ませたいところだな……未来で協力し合う仲でありたいんだからさ。

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