10−57【天界への階15】



◇天界へのきざはし15◇


 国境村の中央、バカデカイ塔があるその場所には、重要施設と呼べる建造物も多く建てられていた。

 その一つが、さっきも言った迎賓館げいひんかんだ。

 お客様を迎える為の建物、それが迎賓館げいひんかんなわけで、しかし実際の使用は今回が初めてなんだ。


「よ、ようこそお越しくださいました!!」


「「「「「ましたーーーーー!」」」」」


 そこにはレイナ先輩から話を聞いたルーファウスと【ルーガーディアン】の面々が、いかにも緊張した面持ちで待機していた。


「ルーファウスは一度会っているだろう?なんだその顔面蒼白は……」


 ジト目でジルさんがルーファウスを見ていた。

 呆れてるなこの顔。


「あ、あの時は生意気にも身分を隠していましたので……申し訳なくなってしまって」


 頬から一筋汗を流し、ルーファウスは引きつった顔で馬車を見た。

 そしてその馬車から降りてくるニイフ陛下。二度目の乗り降り。


「――構いません。事情は我が娘に聞き及んでいます……我々はエルフ族は、遺恨を望みませんよ」


「……へ、陛下。寛大なお言葉……痛み入ります」


 ニイフ陛下の優しげな笑顔を見て頭を下げる。

 おい、ドスケベ正装には何も言わないのか……流石だなルーファウス。

 いやそれとも、この世界では普通なのか?普通捕まるぞ?


「そ、それではこちらへどうぞ」


 視線を俺に送るルーファウス。

 ああ、それでいい。もしどこかの国の重鎮が訪れた場合、その対応を任せたのは公国の貴族である【ルーガーディアン】だ。

 中にはメイドの心得を持っている人もいるらしいし、接客に最適だからな。


「よしなに」


 ニイフ陛下は、特に俺が何もしていないことをとがめない。

 流し目で一瞬だけ俺を見ただけだ。


『――魔力反応あり。暗号化された文章です』


 そうみたいだな。ウィズ、通訳よろしく。


『……「ミオ殿お久し振りですね、積もる話もありますが……まずは永きに渡る歴史の根底を払わねばなりません。それを承知で、公子に命じたのでしょう?心遣い感謝しましょう……では、また近いうちに。楽しみしていますよ」……だそうです』


「あはは……バレてたか」


「流石ね」


「だな。長寿は伊達じゃ……おっと」


 ウィズの言葉を聞いたミーティアと二人で笑う。

 迎賓館げいひんかんに入ったのを見届けて、俺は。


「よし、それじゃあ陛下たちを頼むな、ティア」


「任されたわ。そっちも急ぎでしょう?」


「ああ。村長と問題の女神様……ウィンスタリア様を連れてくるよ」


 ルーファウスとレイナ先輩だって理解しているはずだが、呼ぶには時間がなかったからな。さっきのルーファウスの視線にはそういう意味合いも含まれているはずだ。

 公国の女神、ウィンスタリアはエルフ族の国の滅びに大きく関わっているはず……だから聞かなければならない、歴史に刻まれた侵攻の、悪しき遺恨を。

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