10−56【天界への階14】



◇天界へのきざはし14◇


 「――陛下!」と、少し焦り気味に膝をつくジルさん。

 訪れたのは少数の集団、小さな馬車に乗っているであろうその人……ニイフ・イルフィリア・セル・エルフィン女王陛下が、姿を現した。


「……大義ですね、ジルリーネちゃん」


 お付きの人……エリリュア・シュベルタールさんの手を取り馬車から降りる。


「すっげ……」


「――ミオ?」


 その姿に、つい声を漏らしてしまいミーティアに声で圧をかけられる。

 なにせ陛下の姿は、里にいた時とは大違いの露出度だったんだ。

 エロフと揶揄されるのがうなずけてしまうほど、大きく開いた胸元、白地の生地は隠す意味あんのかとツッコミを入れたくなる程度のものしかない。


「ご、ごめんつい。でもさ、もしかしてあの服装って」


「そうね、エルフ族の正装と言えるのかも。凄い露出よね、胸も見えるし」


 ツーン。


「だからごめんって……わざとじゃないから」


 しかし正装か、これは目に毒だ。いやマジで。

 ん?つまりだ……こんなドスケベ衣装を、エルフの女性は着こなすという事。

 じゃあジルさんやエリリュアさん、もしかしたらイリアも……


「ミィオ〜?」


「あ!いや、あはははは……」


 もう笑って誤魔化そう。

 そんな俺とミーティアのやり取りを見ていたエリリュアさんが。


「お久し振りですね、ミオ、ミーティアも」


 ジルさんとニイフ陛下はお話中だ。


「エリリュアさん、お久し振りです」


「ご無沙汰しています、エリリュアさんもお元気そうで」


「ええ。ようやくここに来ることが出来ましたよ」


 なるほど……エリリュアさんも正装なのか。

 と、なると。もう一つの覚えのある反応は、確実にニュウ・カラソラドールさんだ。あの凶器とまで言える胸……どうなっちまうんだ!


「――ミオ、陛下との話が終わったぞ。ん、どうした変な顔をして」


 話を終えたジルさんが戻ってくる。

 ニイフ陛下は馬車に戻った……そうか、女王陛下だもんな。様々なしがらみがあるから、そう簡単に出入りできないんだ。


「い、いや何でもないっす。それより続きは迎賓館むこうで、ですよね?」


「ああ、そうお伝えしてある。すまないが挨拶は建物の中で頼む、色々と都合があるからな」


 やっぱりか。


「分かりました。それじゃあ案内は任せても……」


「任せておけ。お嬢様、お手伝いを頼めますか?」


「ええ、是非」


 道だけは広いから馬車の移動は簡単だ。

 人数も少ないし……ってあれ?後方からもう一台馬車が。


「……ん?荷馬車か?」


 俺の疑問にエリリュアさんがしたり顔で。


「あれはこの村への献上品です。品質はよくありませんが、森のキノコや野菜……我々は食べませんが獣肉を少々……あとは工芸品ですね」


「お〜!」


 これはデカいお土産だな。

 獣肉が何の肉かは気になるが、食用キノコは安定、エルフ族の作る工芸品も、伝統のある高級品が多いと聞くし。

 さては……ミーティアの為だなコレ。


 そう考えれば、エルフ族……いては女王陛下は交渉をするつもりだということが分かる。エルフ族の価値ある工芸品を手札に、この国境村でのエルフ族の立場を明確にしようと言うんだろうな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る