10−55【天界への階13】



◇天界へのきざはし13◇


 その反応は真東、俺たちはそこから急いで村に向かった。

 大きな反応は三つ、俺もミーティアも覚えのある反応。

 丁度この国境村にも、その反応に似た反応が二つほどあるんだよなぁ。


「――ミオ!お嬢様!」


 おっと、その反応の持ち主が来た。


「ジルさん、もしかして【ルーマ】で連絡がありました?」


「……いいや、突然だ!面倒もいいところだぞ!」


 面倒って言っちゃったよこの人。

 連絡を入れずにいきなり訪れるとか、マジのオカンムーブじゃないか。


「そうですか、じゃあ迎えに行きましょう。ティア、デートはお終いみたいだ」


「そうみたいね、私も行くわ。ではレイナ先輩……」


「えっと〜、これってどうしたらいい?」


 そうだな……来訪者は公国組にも大きく関わりのある人物だ。

 特に、気にしまくってるルーファウスには。


「ルーファウスを呼んで、中央の迎賓館げいひんかんで待っていてください。お客さんは――エルフ族の女王様ですから」


「――え!!わ、分かった〜〜〜!」


 顔を青くして走り出すレイナ先輩。

 ことの重大さはレイナ先輩も分かっているんだな。流石に公女様だ。


「それでは行こうか、ミオ、お嬢様……陛下をお迎えに」


「はい」

「ええ」


 国境村に訪れた四つめの勢力、エルフ族。

 女王直々に来訪した理由は……何なのだろうか。





 国境村の東部、まだ手付かずのその場所には、控えめな木の看板だけが設置されていた。いずれは門を建てて、検問と入国(国境だから)の手続きをする施設を建築する予定だったが、まさかそれよりも早く来訪者が訪れるとはな。


「……完全に気配を隠して来ましたよね」


「だな。わたしですら直前まで気づかなかった……それに対してジェイルのアホは逃げ出したぞ」


「な、何してるのよジェイルは……」


 ジェイルにとっては異母か。

 ミーティアが呆れるのも分かるけど、会いにくいんだろうな、ジェイルの奴。


「あいつは陛下に合わせる顔がないと、何度も口にしている。しかし陛下……母上は許すと言っているんだがな、はぁ……」


 これはエルフ族の問題の一つでもある。

 裏切り者と呼ばれたエルフの王子、ジェイルの処遇は、もう百年も前に決められていて、その上で今なんだから。


「ニイフ陛下はジェイルに会いに来た……って事は?」


「ピンポイントではないだろう。もともと村……【豊穣の村アイズレーン】には訪れる想定ではいたんだ、それがこんな形とはわたしも思ってはいないさ」


「……ですよね」


 ならばニイフ陛下の目的はこの国境村、協力者である自分たちエルフ族の待遇。

 そして自らの娘であるジルさんと、夫である亡きエルフ国王の忘れ形見、ジェイル。


「来たみたいよ」


 ミーティアが視認した。

 ぞろぞろではない。数は圧倒的に少ない、公国の人たちと比べたら十分の一もいないくらいだ。


「――陛下!」


 我先に駆け出したジルさんを、俺とミーティアも追う。

 厄介なことにならなければいいけどなぁ……

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