10−54【天界への階12】



◇天界へのきざはし12◇


「ここはカップルがイチャつく場所じゃないんだけどなぁ〜」


「「す、すみません!」」


 ニヤニヤしながら俺とミーティアの元まで到達すると、大股で俺たちの周囲を回り始めるレイナ先輩。

 やっべすげぇ恥ずかしいことしてた!


「さっすが男のフリしてまで冒険者学校に入ってくるだけはあるね〜、ミーティアちゃん……いやトレイダ・スタイニーくん?」


「――うっ!!そ、その節はまことに……申し訳ございませんでした……」


 ミーティアの心にクリティカル!

 ぐっさりと刺さった言葉の威力は、赤かった顔を青くするほどだった。


「あっははは!でもいいね〜、やっぱり二人は恋人?そーだよねぇ、同棲していたわけだし〜?」


「うぅ……」


「レイナ先輩、そろそろ止めてあげて下さいよ。ティアだって分かってるんですから」


 このままでは自信まで小さくなりそうなミーティアに助け船を出す。

 【冒険者学校・クルセイダー】でのミーティアの行動は、確かにやりすぎな面もあっただろう。

 なにせ男のフリをして男性寮で過ごしていたんだ。学校の理事であるエルフの女王様やジルさんの影の協力がなければ、今頃どんな事になっていたか。


「ごめんごめん、羨ましくてさ〜!」


 ミーティアの肩にポンと手をおいて、レイナ先輩は笑う。

 羨ましいとか、そんな風に思うのかこの人でも。


「それじゃあ改めてよろしくだね、ミーティアちゃん」


「……あ、はい。レイナ先輩」


 握手をする。

 トレイダ・スタイニーとしては数回行動を共にした。けれどそういえば、ミーティアとしては会っていなかったんだっけ。


「水浴び以来だね〜」


「ですね」


 水浴び……だと!?


『――【アルキレシィ】を討伐する直前だと思われます。クラウお姉さまやキルネイリア・ヴィタール、そしてミーティアとレイナ・ハブスンの四人で』


 ああそう言えば、そんな感じのことがあったな。


「ところでレイナ先輩は、ここで何をしていたのですか?」


「ん?いやルーがね、この前の戦いの――」


「……?」


 そのレイナ先輩の弟思いの言葉を聞きつつも、俺の【感知かんち】に引っ掛かる気配。これは……まさか。


『――魔力反応です。ミオもウィズが言わなくても察知出来るようになったのですね……感慨深いです。今まではウィズが言うまでだらしのない顔をしていたのに』


「おい、一言多いんだよ……ってこの反応、東からだな」


 それほどの集団ではない。

 精々十人そこらの反応だが、大きな魔力反応が三つ。

 そしてその三つとも、俺もミーティアも覚えがある。


 それは、国境の村に訪れる更なる協力者。

 長い時を生きている者たちの来訪。どうやらあの方は、約束通り村に来てしまったらしいな。

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