10−51【天界への階9】



◇天界へのきざはし9◇


 女神の教会がある西部(帝国領)から塔へ移動をする。

 クラウ姉さんとイリアに言われた通り、俺はこれから……ミーティアをデートに誘うのだ。


「い、忙しそうだなぁ〜……」


 絶賛大忙しのミーティアの今日の予定は、新たに生産された野菜の納品のチェック、そして村人から選別された信頼の置ける人物たちから構成された、運送業との打ち合わせ。


「――ではそちらをお願いします。ええ、荷は厳重に慎重に、はじめが肝心ですから。皆さんのご協力のおかげで、この【コメット商会】は成り立ちます、どうかお力をお貸しください」


「「「はい!会長!!」」」


 真剣な顔を見せて協力を願い出たと思えば、今度は満面の笑みで可憐に振る舞う。

 これはミーティアの魅力だ。以前には出来てなかったであろう対応力。

 そんなギャップを見せられたら、従業員もやる気になるってものだな……


「――では、商品の運送を始めましょう!まずは各町村に回って、試食を含めたアピールを!【クロスヴァーデン商会】にはなかった野菜や果実を中心に、私たちの努力を示します!……業務……開始です!!」


「「「おおーーー!!」」」


 会長の始まりの声に、運送を任された村人たちもやる気に満ちていた。

 ここまで二ヶ月と少し、準備を重ねたミーティアの夢が始動した。




 従業員たちは塔から出て、俺が事前に用意した荷馬車……王国軍が使用していたあの巨大馬車を、【無限むげん】を使って小型化、更に量産した物に乗り込む。


「あれ……ミオ?」


「……ああ、お疲れティア。それにしても、なんだか士気が高いな、随分と信頼されてるみたいだし」


「うん。皆さん協力的でいてくれるし、やっぱりエリアルレーネ様の言う通り、自分の意思で決めること、その結果生活になると言うのが、刺激になったのかしら」


「それはあるな。俺が能力で何でもかんでもやるよりも、自分たちでやったほうが今後の為にもなるって……確かに時間はかかるかもしれないけど、それでも自分たちで進んでる自覚も出てるだろうし」


 作業を進める従業員たちは、ほとんどが【豊穣の村アイズレーン】で過ごした人たち。言ってしまえば、閉鎖的な村に閉じこもっていた人たちだった。

 それが自律的に参加し、今やこうして各地の町村へ出ていこうとしてるんだ、正直言って感慨深い。


「ミオのおかげね」

「ティアのおかげだな」


「「え?」」


 なんか被ったし、互いに思っていたようだ。


「ははっ……」

「ふふっ……」


 笑い合う。

 ミーティアがこうして商会を作らなければ、今でもきっと農民でいたであろう村人たち。だから俺はミーティアのおかげだと思ったが。

 ミーティアに言わせれば、俺が外に出たから、俺の行動がきっかけで変わったと思ってくれたらしい。


「さて、後は?」


「えっと、今発った方たちは二〜三日後に帰還予定だから、しばらくは待機かしら。もちろんまだまだやることはあるけれど」


「そっか。じゃあ……ちょっと出ないか?」


 俺が手を差し向けるのは、広がり始める村だ。

 一緒に行かないかと、少し遠回しだけどお誘いだ。


「……い、いいけど」


 視線を逸し、頬を赤く染めてミーティアは頷いた。

 そして差し出す手。


「よっし!じゃあ行こう、忙しくて見れなかった、大きくなった村を……見に行こうぜ!」


 俺はその手を取り、二ヶ月で進歩した村へ、二人で歩き始める。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る