10−48【天界への階6】



◇天界へのきざはし6◇


 女神の寝所に訪れるのは、これで何度目だろう。

 綺麗に設えられた部屋は、最高級の宿以上の雰囲気を醸し出し、村娘であるあたしがいてもいいのかと思わせうような作りだった。


「ふーん、いいじゃないその服」


 アイズさんがマジマジと、あたしの周りをグルグルと回転して観察する。

 少し恥ずかしい。女神様たちに用意されたこの服……あたしなんかには不釣り合いな素材で、とっても可愛いけど、少し露出も多いしなんだか……人前には出られない気がする。


「そ、そうですか?」


「ええ、よくお似合いですよ。ですがやはり……」


 エリアルレーネ様の視線が胸に。

 羨むような妬ましいような、まぁ小さな程の視線だけど。


「わはは!いいものだなぁ、新時代の巫女・・・・・・というものはっ!」


「ど、どうもです……恐縮しかないですけど」


 女神様は、皆々様が優しく接してくれます(一部を除き)。


「そんなかしこまらなくていいのよ、あんただってもう……あたし等と同じだわ」


 椅子に座りながらアイズさんがそう言う。

 そう、あたしが巫女と呼ばれるのも、もう短い期間じゃなくなってきた。

 国境に村を作り始めて直ぐに、あたしは女神様によって宣言された。


 ――この村のあがめるべき存在、第五の女神として。


「そうですね、アイズの言う通り……アイシアさんはもうわたくしたちの妹も同然です。末っ子ですね、うふふっ」


「おいおい、それじゃあ名前がかぶるぞぉ、アイズとアイシアで!」


「そ、そう言われてもですね……」


 なにやら女神のお名前は、アイウエオで始まっているらしく、このままだとアが二人になるらしい。正直言ってよく分からないルールだった。


「なら名前変えれば?」


「ええ!?」


 まさかの事態だった。


「安心なさい、女神の名は称号みたいなもんよ。あたし等だって、本名じゃないしね」


「そ、そうなんですね……」


「ですがそれはいい案です。アイズが存命できる以上、新たなアイズレーンは必要ありません。ですので……これはいい機会、新たな女神の誕生ですね!!」


 エリアルレーネ様が嬉しそうに、ポンと手を叩いた。

 多分だけど、あたしの意見は通りそうもない。


「あたしはまだ、女神になんて程遠いですけど、名乗るのもおこがましくありませんか?」


 あたしは、能力【代案される天運オルタナティブ・フォーチュン】を自由に発動も出来ない。

 神力と呼ばれる力も、一切使えないのに。


「力は後から必ず身につくわ。信仰されることで、女神は力をつけるんだから……だからまぁ、始めはそれらしくいればいいのよ」


「それらしくって言われても……」


「その為の衣装ですよ、アイシア……いえ、そうですねオルディアナと言うのはどうでしょう」


 エリアルレーネ様にそう呼ばれた瞬間、あたしの中で何かが弾けた気がした。


「あ……」


 後の世界で、あたしはどう呼ばれるのだろう。

 国境の村の女神?五番目の女神?

 その未来をてもいないのに、笑みが出るのはどうして?


 そう遠くはない未来、三国国境の村で誕生する新しい女神――名を【慈愛神オルディアナ】。

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