10−47【天界への階5】



◇天界へのきざはし5◇


 その頃地上、塔の西側にある帝国領……女神の教会では。


「わっはっは!!反省しろイシスぅぅぅ!」


「ぐ、ぐぐぐっ……この――ドチビィィィィ!」


 【豊穣の村アイズレーン】の地下から移転された教会は、帝国領の一番大きな建造物となっていた。

 ミオの【無限むげん】のロード機能により、教会をそのまま地上に移し、更にはアイズレーン以外の女神の存在を示すために、規模を大幅に拡大をした。

 その結果が、四柱の女神の拠点となる【四神教会ししんきょうかい】の完成だ。


 そしてこの場、叫び散らかす二柱の女神。

 幼女神と簀巻すまき……ではなくなった神、ウィンスタリアとイエシアスだ。


「だぁーはっはっはっは!まったくイシス、何もできないだろ〜、やーいやーい」


「こ、この……いいかげんに!!――くっ、うぅ……頭が」


 四柱の女神の中で、唯一敵側だったイエシアスだが、流石に数ヶ月も簀巻すまきにはしておけなかった。

 ミオとしてはそのままでもよかったが、流石に女性である。

 周囲から奇異の目で見られるということもあり、神の威厳を保たせるために開放したのだ……ただし、一種の呪いをかけて。


 カチャリ……


「――ザマァ無いわねイエシアス。ふふっ……そのネックレス、気に入ったでしょ?」


 したり顔でそう言うのは、部屋に訪れた女神。


「ア、アイズゥゥ……!」


 そして更にその奥から。


「そう睨むものではありませんよ、イシス。そのネックレスは、ミオが貴女あなたの為に丹精を込めて作成したものです、しかもわたくしたち三柱の女神が神力を注いで……」


「エリア……その神力のせいで、私はこんなに苦痛を受けているんでしょ!」


 このネックレスの作成を言い出したのは、何を言おうエリアルレーネだ。

 ある程度は自由にできる、しかし神の力を行使することを禁じ、三柱の女神のうち、誰かが近くにいなければ永劫の頭痛が発生するというもの。因みに女神の誰かが意図的に頭痛を発生させることもできる。

 これにミオは「緊箍児きんこじかよ」と笑っていた。


「憎たらしいものを次々と……これでは主神様の計画が、私の願いが……う、うぅ」


 顔を覆い、泣く女神。


「あらあら」


「涙もろくなったわね、年じゃないの?」


「あははははははははっ!」


 三柱それぞれリアクションは違うが、実際イエシアスは、この数ヶ月で非常に弱々しくなった。特にミオに対し、あからさまに恐怖を見せるように。


 ガバリ――と戻り、イエシアスは。


「ねぇ、あの男をこれ以上好きにさせるつもりなの!?あれは化け物中の化け物、それこそ主神様に匹敵するような、私たち創られた女神とは違う……それを――」


 コンコン。


「来たわね」


「き、聞きなさいよ!!」


 イエシアスを無視し、ノックされた扉を開けると。


「失礼します、アイズさん」


 その少女は、女神のお世話役。

 帝国領で一番の権限を持つ女神たちに選ばれた、次代の女神。

 近しい未来、みずから女神と成ることを選んだ少女……アイシアだった。

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