10−46【天界への階4】



◇天界へのきざはし4◇


「これは想定外ね」


「だなぁ」


 公国領土を掘削くっさくして直ぐに、その空間が出現した。

 驚く俺とクラウ姉さんに対して、ミーティアは。


「エルフの里の地下空間と同じだわ……やっぱり、ジルが言ってたように公国全土に広がっているんだわ」


 ミーティアがジルさんと冒険した、エルフの里【フェンディルフォート】の地下。


「つまりだ、この地下空間を使えば……簡単に他国の領土に近付けるって訳だ」


「そうね。エルフの里では結界と、守護者による防衛があったけれど……ここにはなさそうね」


 魔力の反応はない。

 ミーティアの言う通り、ここにまではエルフの加護は届いていないんだ。


「随分と綺麗よね、この空洞。まるで手入れがされているって言うか、人工的と言うか?」


「形的には、上下左右均等で正方形だし、整い過ぎと言えばそうかも」


 更にはこの空間、非常に明るい。

 クラウ姉さんが言うように、長年誰かが手を入れているかのように。


「土壌どころじゃないわね、ここをきちんと管理するとしないとでは、公国領の防衛を見直しを検討しないと」


「そうよね、ジルにももっと詳しく聞かないと」


「……この地下空間が発端なんだよな。公国の侵攻と、エルフの国の亡国は」


「「あ」」


 全てを知ったわけじゃない。

 でも、この地下空間を通り、昔の公国貴族がエルフの国へ侵攻した。

 その入れ知恵をしたのが、当時の公国貴族の大臣……コルセルカ公爵家。

 エルフの国の王子、ジェイルをあざむき騙し、一国を滅ぼした。


「聞きにくいわね流石に」


 クラウ姉さんが目を細めて考え込む。


「里でも、ジルは凄く考えているようだったわ……それに、なんだか調べ物もしていて」


「調べ物?……もしかして、公国の動向とか?」


「今思えば、そうかも」


 腕組みをするミーティア。

 少し申し訳なさそうにしているのは、その時のジルさんを始めとする、エルフの里の協力を得るきっかけが、自分だからだろう。


「ジェイルから聞き出した地下の詳細を使って、エルフの国を攻め落としたんだ……今も正確な情報を持っていてもおかしくないからな」


 その割には、数度攻めてきた公国軍は地上からだった。

 地下を使った形跡は……うん、ないな。


「なんにせよ、ここの正確な把握と管理は重要な課題ね。数ヶ月かかってでも、ちゃんとするべきだわ」


「そうね」

「だな、賛成だ」


 帝国領土、王国領土の土壌チェックは滞りなく。

 公国領土だけは問題が残ったが、うまく使えればこちらの重要な防御術にもなる。


「戻るか……」


「そうね、そろそろアイシアの準備も終わっているだろうし」


「アイシア、大丈夫かしら」


「……ど、どうかな」


 俺たち三人が不安な理由。

 それは、アイシアと四柱の女神を巡る、未来のための布石だ。

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