10−45【天界への階3】



◇天界へのきざはし3◇


 まずは帝国領土の地下へ。

 【無限むげん】で地面を掘削くっさくをし、地下二百メートルまで降りる。


「この塔の地下って、こんな感じなのね。なんだか狭くて暗くて、気味が悪いわ。もう上が見えないし」


「ふふふ……そうかもしれないわね。それに、塔の高さと地下を合わせたら、すごい高度になるものね、怖いのも納得かも」


 そのまま三人で行動をする。

 クラウ姉さんはランプを持ち、ミーティアは地面の肌が崩れないように観察。

 俺は無言で【無限むげん】を使い、もくもくと作業だ。


「……」


「それにしても、ミーティアまで来るとは思わなかったわ」


「え?なんで?……だってウィズの言葉を教えるの、私でしょ?」


「そうかも知れないけど、たまには私だって……」


 唇を尖らせるクラウ姉さん。

 たまにはなんだよ、もしかして俺と二人きりが良かったとか?


「それは駄目かな。クラウったら時折、ミオを変な目で見ているでしょ?」


「――み、見てないわよ!!」


 見てるよ昔から。

 始めは少年趣味なのではと疑いもあったが、異世界なんかに転生してはっちゃけてた……そう自分の中で納得してた。


「そろそろいいかな。姉さん、壁にランプ当ててくんない?」


「分かったわよ!」


 助けたのにキレるなよ!

 クラウ姉さんは持っていたランプの光を掘削した地面に当てる。


「「「……」」」


 これが帝国領土の土壌。

 それも【無限むげん】と【豊穣ほうじょう】で改善したものだ。


「ウィズ、記録」


『もうしました』


 調べると、やはり【豊穣の村アイズレーン】とは大きく違う。


「同じ帝国領土でも、やっぱり違うのね。こっちの方がなんていうか、さらさら?」


「湿り気はないな。これじゃあ地下に空間があったら、簡単に崩れちまう。【無限むげん】で整えるのもいいけど……まずは王国領土と公国領土を調べてからかな」


「そうね。じゃあ戻りましょうか」


「穴は塞がないで、このままにしよう。セーフポイント的な場所だけ作って、【転移てんい】で帰る……そのまま塔の下層から移動して、王国領土だな」


「分かった」

「ええ」


 そうして【転移てんい】で一度戻り、今度は北の方角へ掘削くっさくを始める。


「……早いものねー」


「便利よね、ミオの能力」


 まるでチーズを切るように、硬いはずの地面が削れて……いや、視覚的には削れると言うより、凹んで行っているが正しい。

 しかも戻せるしな。


「おし、同じ位置まで来た」


 今度は言われなくても、姉さんがランプの光を壁に当ててくれた。


「どれ」


「あ、水分がある」


「そう言えば近くに川があったな……小川程度だけど」


「虫もいるわね、ミミズも」


「野菜を育てるにはいい環境だよ、やっぱり【豊穣ほうじょう】で整えてたのはチートだったんだな……」


 王国領土は、思ったよりも条件が良かった。

 乾いている帝国領土の地面より水分もあり、病原菌も害虫も少なく、農家にとっても最適だと思う。


「はいセーフポイント、戻るよ二人共……」


「あ、はい」

「ええ」


 手を取り【転移てんい】。

 さて、最後は公国領土の調査だけど……事前に聞いていた情報を精査すると、公国領土は……地下空間だ。

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