10−36【防衛戦2】



◇防衛戦2◇


 ミーティアはナイバルさん等大工たちと、今後も続く内装の打ち合わせに入った。

 ここまで行けば、俺の出る幕も減る。

 まだまだやるべきことが多い以上、少しでも分担して行かないとな。


「ミオお兄ちゃん」


 袖が引っ張られる。


「ん、あれ……なんかあった?」


 俺とリアが外に出ると、建て始めの建造物がチラホラと見える中、人混みを発見した。その中には……ルーファウス・オル・コルセスカの姿も。


「ミオくん!そちらにいましたか……ご報告があります!」


「ルーファウス、どうした?」


 緊迫という言葉がしっくり来るな。

 ウィズ……村の将来設計に回してたリソースを一旦戻してくれ。


『――南に高熱源反応。密集性から、規模は数百人と予測』


 そういう事か。

 南はルーファウスの言っていた町がある。

 スパタ伯爵だっけ……魔法剣士と名高い貴族らしいが、行動は速くはなかったな。


「南から、軍を確認したと報告がありました。十中八九スパタ伯爵の軍かと思われます」


 守備隊の中の中心は、ルーファウスの協力者が大半だ。

 任せてくれと自信を見せたのもあって、やはり魔法の国の兵士たち、頼りになる。


「……防壁の準備は?」


「しっかり補強されています。守りだけ・・なら、安全は保証しますよ」


 つまりは攻め手に欠けると。


「……手を貸すか?」


 俺は少しからかい気味な顔と声音でルーファウスに言う。

 俺がそんな風に言うのにも理由がある。

 まず防壁を作ったのは南寄り、つまりは【テスラアルモニア公国】領土だ。

 その場所では当然ながら、公国のルールを基準に建造物も、法律なども合わせることになっていた。

 よって、俺やミーティアは帝国・王国の人間だ、だからおいそれと協力を打診は出来ないと、ルーファウスも理解している。


 だから。


「いえ、ここは僕たちが」


 手で制し、きっぱりと俺の提案を断るルーファウス。

 僕たち……というように、ルーファウスの後ろには公国の協力たち、通称【ルーガーディアン】と呼ぶ親衛隊が準備をしていた。


「そっか、なら頼りにするぜ?」


 それにしても、協力者たちは女性の比率が凄いな……十人の実力者のうち、八人が女性だ。肩身が狭いね、男どもは。


「はい!」


 屈託の無い笑顔で返事をするルーファウス、彼はそのまま振り向き、協力者たちに向かって。


「皆さん、ミオくんからの信頼は裏切れません!僕たちの力を示して、この世界に誕生する新しい国の発展に……貢献を!!」


「「おーーーーーー!!」」

「「「「「「「「ルー様ぁぁぁぁぁ!」」」」」」」」


 ルーファウスの信頼がエグい。

 男二人は同調で雄叫びだけど、女性八人は黄色い歓声だぞ……


「ははは……まぁ頼んだよ、ルーファウス」


 スパタ伯爵はおそらく、あの巨塔を確認しにやってきたのだろう。

 対立する勢力であるルーファウスたちが防衛してきたら、どう思うだろうな。

 だから少し楽しみなんだよな、公国の協力者たちの実力が。

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