10−35【防衛戦1】



◇防衛戦1◇


 ミーティアによる商会の名は【コメット商会】と銘打つ事に決まった。

 塔の内部の最初の施設、そして国境村の最大の目玉……世界一の商会となるべき存在だ。


「わぁぁぁ!すっごーい!」


 【竜人ドラグニア】の少女リアこと、リ・アイリスが見上げて驚く。

 塔の入口に設けた案内板を見ながら、その一つしか無い名前を見てだ。


「ふっふ〜ん、だろぉ?ミーティアお姉さんのお店だぞ〜」


「ミーティアお姉ちゃんすごいね!!」


「あ、あはは……なんだか照れちゃうね」


 沢山の荷物を抱えながら、ミーティアは照れ笑いを見せる。

 俺とミーティアの間にいるリアがまるで子供のように見えて(妄想)、なんだか幸せな空間が、その未来に向かっている気がした。


「看板も、ミオの言う英名?に変えてから、とっても格好良く見えるわね」


 看板には【COMET・COMPANY】と書かれている。


「だなぁ。この世界の文字とかさ……全部ひらがなだったから、逆に読みにくいまであるからな。この村から発祥となって、英語を書けるようになってもいいと思うんだ。そもそも言葉としては、普段から使ってるんだから」


 俺たちの名前とか、ミオ・スクルーズだけど……文字で書くとみお・すくるーずなんだぜ?少しダサいと言うか、読みにくいよな。もう慣れてたけど、これも文化の発展に近いと思うんだ。


「長い間使ってきたものを変えるのは難しいけど、それでも良い判断だと思うわ」


 変わる事を受け入れるのは容易ではないよ、だからミーティアがそう言ってくれるのは嬉しい。


「リアもお勉強するっ!」


「ああ、と一緒にな」


 俺の言う皆……とは、村の小さな学校に通っていた子供たち、更には移住者の子供と、ルーファウスの協力者たちの家族、やはりその中にも子供たちは多くいて、学びの場を求めている声があったからな。


「うん!!」


「楽しみね、新しい学校」


 しゃがんでリアに視線を合わせて話すミーティア。

 眩しいほどの笑顔と、優しさの包容力だ。


「コハクだってまだまだ子供だしね、焼けちゃった学校を完全に戻すことも考えたけど、それだったら新しくと……新校舎って感じで大きいのにする事にしたからな」


 塔の内部に入っていきながら、三人で作業をする人物に合流。

 内装の工事をしてくれている、大工さんたちだ。


「坊ちゃんお疲れでさぁ!こんな感じで、いいんですかね?」


「ナイバルさん、お疲れ様です……どれどれ」


 この人はナイバル・ベトラさん。

 禿頭とくとうをペシペシと叩きながら、俺に確認を求める。

 村の大工の棟梁とうりょうで、まだ三十四歳と若いながら、村の大工たちをまとめてくれている人で、俺たちスクルーズ家の面々と同じ天族だ。


「いい感じですね、図面通り。素材はどうでしたか?」


「バッチグーよ。今までの村にはないような素材で内装が出来て、楽しかったぜ」


 塔全体は金属製であり、中はギャンギャンに光っていたし反射もしていた。

 だから木材で内部を補う方針だったんだが、そこで問題は素材だ。

 焼けた村に残っているわけはなく、素材は俺が森に生息している木の魔物……【バーチトレント】を狩りまくってドロップした、最高級品の白樺を提供した。


「綺麗ね、白い木材をベースに磨いた石材。これなら立派な商会に見えますよ。感謝します、ナイバルさん」


「い、いやいや!坊ちゃんの将来のお嫁さんにそう言ってもらえるのは嬉しいですなぁ!なぁお前ら!!」


 「「「「へい!!」」」」と後ろから。

 ミーティアは照れたようにしながらも、満更ではない様子だ。

 因みに俺はクソほど恥ずかしい……慣れてないからな、こういうの。

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