10−26【コメット商会5】
◇コメット商会5◇
ジェイルが移動をすると、直ぐに戦闘は始まった。
満身創痍のジェイル一人、【豊穣の村アイズレーン】近郊で、その戦いは起こったのだ。
【アイズキャニオン】……
現在その場所は草原、または平原と呼べる場所であり、
しかし、その地形を脅かすほどの事象まで……残り数分だった。
◇
「――ふっ!ぁぁぁああああっ!!」
細剣を振るい、言葉を交じ合わすこともしない兵士を斬る。
悲鳴を上げることもなく倒れ、しかしそのまま起き上がる。
「これが聖女の
肩で息をしながらも、ゾロゾロと増えていく兵士を視界に収める。
何度斬り伏せても起き上がられては、魔力も体力も少ない今の自分では、時間を稼ぐことしか出来ない。
「まるで蟲だな、儀式でも始まりそうな勢いだ……ふっ……」
自分の発言に、ついおかしくなる。
魔法はエルフの
それがなんだが懐かしくもあり、その
「まぁいい、時間だけは稼ぐさ……この俺の全てを以ってでも、
魔力も不十分、体力もない、ジェイル自身も気付いている……潮時だと。
「せめて村の誰かが……マリータに気付いてくれることを」
瞳を閉じ、そう祈ると。
「――ジェイル・オル・バルファウス・エルフィン……参るっっ!!」
失われたエルフ国の王子、ジェイルの死闘が始まるのだった。
◇
その光景は、俺たちの息を詰まらせた。
魔力の反応を頼りに、数回の【
「そ、そんな……まさか――お、お母様っ!?」
そんな大木の影にひっそりと横たわるのは、やつれた女性だった。
肩を負傷しているのか、血で濡れている。
そして顔色は非常に悪く、今にも意識を失う寸前だと分かった。
「ティ、ティアのお母さんっ!?でもこの魔力の
反応はジェイルだった。
しかしその本人はいない、残っていたのは魔力の
「ミオ、いいからお水持ってきて。極力綺麗な流水を……あとこれ、これに【
驚く俺に、クラウ姉さんは冷静に淡々と言う。
地面に置いたのは小さなポシェット。中身は針とか包帯とかの医療具だ。
「わ、分かった!」
【
移動の際に分離されないように【
戻ると、クラウ姉さんとセリスが、ミーティアの母親だという人を介抱し始めていた。
「お母様っ、お母様ぁっ!」
同じくらいに青ざめて、ミーティアは取り乱す寸前だった。
俺は隣に寄って肩を抱く。
「大丈夫だ……落ち着いて、意識を失ってるだけさ。絶対に助かるから、ね?」
「……う、うん」
俺の手に触れるミーティアの手が震えている。
無理には言えないが、それでもこの人が一人だということは……少し離れた場所から【
大きな声では気取られる可能性もある、だから冷静を努めよう。
まずはこのミーティアのお母さんを助けなければ。
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