10−24【コメット商会3】



◇コメット商会3◇


 【転移てんい】で村の北口に移動すると、そこにはセリスとクラウ姉さんがいた。


「姉さん!セリスっ!」


「ミオ、案外早かったわね」

「ほら、やっぱりミーティアさんも来たでしょ?」


「え?どういう事かしら……」


 なんだか意味深な事を言うセリス。

 やっぱりってどういう事ですかね。


「なんでも無いわ。それより……戦闘が起こってるらしいのよ、セリスの風で判明したけど」


「なるほどな。だから行動が早かったのか」


「褒めてくれる?」


「……却下で」


「なぁんで!?」


 嬉々としてそう言うセリスだが、そう簡単に俺もヤキモチ焼かせませんよ。

 なにせ視線が刺さってますしね、それどころでもないですしね!


「規模は?」


 「無視はしないでよぉ!」と聞こえるも、俺の問いにクラウ姉さんが。


「北からだから確実に王国絡み、【感知かんち】の反応だけなら数は二……そしてその反応の後ろから……大きな反応が一つ、密集しているわね」


「じゃあ……ジェイルはやっぱり追われてる?」


「この反応、やっぱりジェイルだったのね」


「――俺の【感知かんち】にもかかった。追手の数は五十に行かないくらい、小隊だな、後方にもいると考えても……多くて二百か」


「四人で充分ねっ、ね?」


 セリスが俺の腕に自分の腕を回してくる。

 自信満々なのはいいけど、なぜスキンシップしてくるんだ!


「だ、だから引っ付くなってば!」


 「いいじゃない減らないでしょ!」と引き剥がそうとしても抵抗する犬皇女。

 くっ、意外と力強いんだよ!


「浮気はだめよミオ。ミーティアに刺されたくないでしょ?」


 したり顔でそう言うクラウ姉さん。

 俺をイジりだしやがったこの人!


「こらクラウ姉さん!!浮気とは違うし!刺されたくは絶対にない!!前世と同じ死に方させようとすんなよ!あといいからセリスは離れろっての!」


 ちょっと待て!それだと俺が浮気して刺されたみたいじゃないか!

 俺はそんな不健全な男じゃないんだが!?


 しかしミーティアはそんな様子を見ても。


「セリスさんの行動にはもう慣れてきたわ。それに、ミオがそういう事しないのは分かってるから」


「あ、当たり前だろ!?それより行くぞ皆っ」


「あら、随分と余裕ね?ミーティアさん、正妻の余裕ってやつ?」


 嫁は一人で充分だっつの!


「ううん……私をなごませようとしてるのでしょう?クラウもセリスさんも」


「え、そうなの?」


「……まぁね。反応がジェイルだって分かってたし」


 そっぽを向きながらクラウ姉さんが言う。照れてる?


 一足先にこの場に来たクラウ姉さんは、【感知かんち】でジェイルだと分かっていたから、だからミーティア関連の事柄だと理解して、セリスと示し合わせていたらしい。

 それにしてもだ、帝国皇女であるセリスをあてつけみたいに使うんじゃないよ。


「ありがとう二人共、でも大丈夫……皆がいるから、ミオがいるから」


「ならいい。もしミーティアの父親が来ても、簡単に渡したりはしないわよ。そうでしょミオ」


「……ああ。当たり前だ」


 嬉しいものだ。

 クラウ姉さんも、ミーティアを心の底から守ってくれる。

 セリスを含む帝国組も、こうして協力してくれる。


 ならば進むのみ。

 俺もミーティアも、ジェイルと共に訪れるのが誰であろうとも、乗り越えられるはずだ。

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