10−20【公国組の真意5】



◇公国の真意5◇


 その日、東大陸の中心部に、突如として謎の塔が出現した。

 奇しくもそれは大陸のへそであり、三代国家の国境が交わる……世界の中心だった。


「……神の道具を使うと、こんなことになるんだな……」


「言葉もありません」


「流石にデカすぎね」


「く、首が痛いわね」


 俺、ルーファウス、セリス、ミーティアの順に。

 影で隠れたその場所で、感想を言う。

 ほんの数分前、あまりにも大きなその塔の出現を目撃した、驚異的な瞬間を。





「いいのか?」


「はい。ぜひ使って下さい」


 ルーファウスが俺に提供してくれたのは、一本の剣だった。

 布に包まれたそれを持っていることは知っていたが、まさかこんな剣だったなんて。


『――転生の特典ギフト、【布都御魂フツノミタマ】です。おそらく【女神ウィンスタリア】の転生者が保持していたものでしょう』


「【布都御魂フツノミタマ】か、これまた凄い物を……」


 ルーファウスが【天叢雲剣あめのむらくものつるぎ】を持っていた時も思ったが、ウィンスタリア様は回収した能力を、そのまま具現化する能力でもあるのかね。


「それを使って塔を建てるだなんて、凄い発想力ね、ルーファウス君」


「い、いえ、これは姉上がですね」


 冒険者学校でも思ったが、レイナ先輩は意外と頭いいんだよな(失礼)。


「レイナ先輩が?」


「はい、ウィンスタリア様にも許可を得ています。こんな形とは思いませんでしたが……献上品として使おうとは思っていました」


「なるほどね。したたかだな」


 これ程の献上品は、この世界にはないよ。

 今の俺なら、【無限むげん】で転生者の転生の特典ギフトにすら影響を及ぼせるはず……使いようによっては、それも可能だろう。


『――可能です。最高級金属の数値変化と思ってしまえば、簡単なものです』


 だそうだ。


「もったいない気もしちまうなぁ……」


 涙を飲もう。

 俺は剣を得意とはしないし、【カラドボルグ】がある。

 うん、そうだよな、そうに決まってる。


「これで塔を……?」


 セリスが俺を見る。

 なるほど、出来るのかって?


「出来ますよ、ミオなら」


 俺の腕を掴んで組んで、ミーティアが言う。

 あのー……恥ずかしいんですけど、人前は。

 どうやらさっきのセリスのスキンシップに当てられて、やきもちを焼いてくれたらしい。可愛いかよ!!


「やるけども……取り敢えず離れようか、ティア」


 あまりにも恥ずかしい。

 人前ではイチャつけないな、俺は。


「剣を……突き刺して、っと!」


 一先ず、ミーティアとセリスとルーファウスには離れていただいて。

 周囲を【無限むげん】で一気に平地にする……木々も岩肌も地面も、一気にだ。


 そして楕円形に地形を整えると、中央に刺した剣に向かって、俺は――【無限むげん】を発動する。


「――【無限インフィニティ】っ!!」


 珍しくウィズ方式に発動。

 魔力の消費は、一回で決まる。だからどれだけ大きな質量のものでも、消費は一緒……消費が変動するのは、操作する回数の数だけだ。


「お……」


「「「え」」」


 童話にある、誰君と豆の木のように。

 突き刺された【布都御魂フツノミタマ】は、その刀身を変化させて急成長……成長?

 天まで伸びるのかと言うほどに、幅もどんどん広がって、俺は後退りしながら三人と合流。


「ウィズ……お前やったな」


『――はい』


 俺の計算よりも遥かに大きい。

 その塔は、雲を突き抜けて。

 場所が場所なら、景観問題で訴えられそうなほどに大きく、広く。


 誕生したのは、転生の特典ギフトによって作られた、村の最初の名物。

 地球の建造法ではありえない、異世界の塔――名を……いやどうしよう、コレ。

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