10−17【公国組の真意2】



◇公国組の真意2◇


 先程の会議で聞く限り、【テスラアルモニア公国】は二分化したと言ってもいい。

 【女神ウィンスタリア】様を筆頭にするルーファウスとレイナ先輩の姉弟。

 そしてその父親である大貴族、コルセスカ公爵だな……問題はそこだ。


「領土の返還は、ジルさんが受け入れたしそれでいい。なんなら今の俺なら……自分勝手にやってしまっても負けだけはない。でもそれじゃあ村を移動するなんて難しくなる」


「反発が出ますからね」


「そう。ルーファウスたちを受け入れるってことは、公国と戦うってことにもなるだろ?まぁそこは問題じゃなくて……」


「公国の国境付近まで行ったら、侵略になる可能性だね〜」


 その通りですレイナ先輩。


「ええ、ましてやその位置に村を起こそうとするんだ……絶対に正規の軍隊が来る。そこでだ」


「はい、防衛についてですね」


 ルーファウスは立ち上がり、鞄から色々と漁って、なにやら羊皮紙をテーブルに広げた。


「これは……地図か」


「はい。公国、そしてエルフの国であった場所の」


 ということは、国境付近の正確な情報が分かるな。

 どれどれ……


「おお……マジで三国の国境なんだな」


 綺麗にYの字になって、上が王国、左が帝国、右が公国と分かりやすい。


「そうですね……って姉上、ウィンスタリア様のお迎え!」


 一緒に覗き込んでたレイナ先輩にツッコむルーファウス。

 そういえばそうだった。


「まぁいいじゃんルー、ウィンスタリア様なら遊んでるよきっと!」


 想像つくんだが。

 遊ぶ幼女神と苛つく簀巻すまき神の姿が。


「で、だ。これを見せてどうするんだ……?言っちゃ何だが、地図ってのはおおやけになってないことが多いだろ?」


 ましてや技術の進んでいない異世界。

 地図は高級品……というか、そもそも貴族や王族しか所持していないんだ。

 ルーファウスは公子だし、持っていても不思議ではないが。


 ルーファウスは国境付近に指を指し、そしてそのまま南東に下げていく。


「この場所に、小さいですが町があります」


「俺たちが拠点にしてた場所からもそうとう南。距離で言えば……七日は掛かりそうだ」


 つまりルーファウスが懸念しているのは、その町からの攻撃だ。

 そこを指し示して断言するということは、軍備は充実しているということか。


「この町は【ルードソン】といい、魔法の研究が盛んで有名です。そして公国の有力貴族……スパタ家が治めている町」


 スパタ……って、確か剣の名前だったな。


『――馬上などで扱うことの多い、軽量化された剣です』


 ウィズに説明された通り、古代ローマ時代からの武器だったはず。


「ミオくんが考えてる通りですよ」


「え!?あ……あ〜そうだな」


 ウィズの説明に納得してたら、ルーファウスに勘繰られた。

 しかもなんかいい風に、ごめんルーファウス。特に考えてなかったよ。


「この町には軍備があります、ミオくんの言う通り七日はかかりますし、スパタ伯爵の性格を考えれば……十日以上は」


 準備の猶予はそのくらいか。

 それにしてもルーファウス、準備万端だったんだな。

 地図もそうだし、周辺の貴族のことも調べてる。

 もしかして、俺と出会わなくてもこうするつもりだったのでは……


 ルーファウス・オル・コルセスカ。

 武力も知力も兼ね備えた、幼い見た目の少年……国を治める才、それをルーファウスは持っているのではと、俺は思った。

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