10−16【公国組の真意1】



◇公国組の真意1◇


 食事を終え、久々の一家団欒は解散された。

 あれだけの事があっても、俺もクラウ姉さんもやることが多い。

 クラウ姉さんはミーティアとジルさんの元へ、父さん母さんは村人が集まる教会の地下広場へ。

 レイン姉さんはアドルさんの元へ、コハクは……まぁ寝た。


 そして俺はと言うと。


「――失礼するよ」


 コンコンとノックをして、返事を待つと。


「どうぞ!ミオくんっ」


 少し甲高い少年の声。

 ルーファウスだ。


「おーミオくん、遅かったねぇ」


 この場所は、公国組であるルーファウスとレイナ先輩に用意した小屋だ。

 サイズも形も、帝国組のプレハブと同じだな。


「すみません先輩、ちょっと色々とありまして」


「そうなんだぁ、あれでも……なんだかスッキリした顔してるねぇ!」


「本当だね、でも……なんだか目の下が赤いかな?」


 姉弟そろって、俺をイジる。

 いいからそういうの。泣く振りをして擦ったんだよ。


「……なんでも無いよ、それより待たせてごめんなルーファウス、先輩もすみません」


「いえ、平気ですよ」


「そーそー平気。別にお客さんって感じで来てはないからねぇ〜」


 そうはいかないですって。


「公国の公女様が何を言ってんですか、もっと偉そうでもいいですよ?」


 ニッと笑いながら言う。勿論冗談だ。


「えぇ〜そう〜?」


 ヘラヘラして照れ笑うレイナ先輩。

 この人、学生の時とイメージ違うな……ってそうか、俺がもう先輩として見てないからだ。


「姉上、そろそろウィンスタリア様をお迎えに行く時間ですよ。この時間に来いと言われてませんでしたか?」


「そうなのか?」


 ルーファウスがそう言ってレイナ先輩を急かす。

 焦ったようにレイナ先輩も、「そうだったぁ!」と慌てて準備をしだした。


「はい。勝手なので」


「ルーファウスも、俺やクラウ姉さん並に女神に辛辣しんらつだよな……」


 苦笑しつつも、少し嬉しい。

 エリアルレーネ様の従者たちは、基本忠実だからな。


「だ、だって転生者の事を隠していたんですよ!?僕の師匠せんせいも転生者と、ミオくんが言ってくれなければ……このまま知らないままでした!」


 そう、それ関連の話をしに来たんだ。


「ははは、それは大変だよな。でも、女神は嘘をつけないんだ。だからこれまでの時間、ルーファウスやレイナ先輩と接していたウィンスタリア様に、騙そうとかそういう思いはないはずだよ」


「そう、なんでしょうか」


 納得出来る部分もあるのだろう。

 だから顎先に指を這わせ、考えるように、思い出すように。

 そしてルーファウスは。


「……分かりました。ミオくんがそう言うなら、ウィンスタリア様にキツく当たるのは止めておきます」


「はははっ、なんだそれ!だからウィンスタリア様への当たりがキツかったのかよっ!小さい反乱だなぁっ」


「あはは……はいっ!」


 いい笑顔で言うルーファウス。

 レイナ先輩は「それでいいの〜?」と苦笑いだった。

 だが……俺は笑い話をしにここに来たんじゃない。


「さてと、一笑いできたし……本題に入ろうか」


「あ〜」


「そうですね、それが今の目的ですし」


 そうだ。

 公国組を受け入れるのなら、当然出てくるのが小競り合いだ。

 ルーファウスとウィンスタリアが俺たちと滞在するのならば……公国から追ってが来ることは予想できる。

 その時にどうするのか、話さなければ。

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