10−11【進む未来は同じはず2】



◇進む未来さきは同じはず2◇


 セリスフィア皇女が、この村を世界の起点にすると最終的な決断をしたのは、アイシアによる未来の光景を目の当たりにしたからだった。

 あれは近い未来だとの直感、更にはセリスだけが見た……看板。

 そこには国境のマークが記されていたのだ……帝国、王国、公国の。


「アイシアさんが【オリジン・オーブ】の能力で見せてくれた光景に、三国の国境が記されていたわ。だから公国からルーファウスさんやウィンスタリア様が訪れるとミオから聞いた時、既におおよその展開は話しているの」


「そうだったんですね」


 帝国組の舵取りは基本的にセリスだ。

 エリアルレーネは転生者こどもたちを見守る立場が故に、反対意見などを出すことは少ない。


「エリアルレーネ様は生も死も受け入れるお方、それが例え転生者わたしたちであろうともね」


「それは……そうですね」


 その言葉に、明らかにヘコむゼクス。

 直接見たからだ、セリスの助けを無視したエリアルレーネを。


「でもそれは本心じゃない。あの涙が……それを物語っていたでしょう?」


 女神は嘘をつけない。


「はい。それは勿論」

「はい、分かっています」


 少し前、騒動が片付いた翌日に……エリアルレーネは謝罪をした。

 自分が間違っていたと、助かってくれて嬉しいと。


「だからエリアルレーネ様が公言した、ミオへの助力……それはつまり、私たちにも協力しろと言ってるのと同じでしょ?」


「……ですね。僕も、彼を敵にはしたくないですよ……ロイドは知りませんけど」


「そ、そうですね。ロイドさんは魔人……ユキナリ先輩や殿下を除けば帝国最強の人材ですから」


「……そうね。だから留守を任せられるのよ、本人は納得しないだろうけど」


 【女神エリアルレーネ】を連れて帝都から離れられているのは、最強の戦力である彼が残っているから。

 彼の実力は、ミオを見てしまうとどうしても劣る気がしてならないが、それでも帝国を語るべき実力者なのだから。


「近いうちに一度帝都に戻るわ。父上……皇帝陛下にも報告をしなければならないし、ね」


「あはは……陛下は【ルーマ】を嫌っていますからね」


 【ルーマ】は通信魔法の道具だ。

 ユキナリやライネもそれを使用して、セリスに連絡を取っていたが。

 セリスの父バルザック陛下は、直接聞かないと意味がないと、断じて認めない。


「気難しいお方だからね、口が動かないのに声が聞こえるのが嫌なんですっけ」


「そう!こう眉間にシワを寄せて言うのよ?「ワシは好かん!!」って」


 皇帝である父親のマネをするセリス。

 娘だけが許される特権だ。


(笑っちゃ駄目、笑っちゃ駄目)

(殿下……変顔に躊躇ないから……)


「というわけで、ミオにも相談するけど一旦帝都に帰るわ。公子くんが人員まで連れてきてるし、負けていられないしね!」


 公子ルーファウスは自身の同志である仲間を連れてきている。

 しかもどうやら若い人員だということで、村を移動する際の働き手になる。

 一方で帝国組はお忍びだったこともあり、数人だけだ。


「やる気に満ちてますけど……殿下も左腕、まだ完治していないこと忘れないでくださいね?」


「あ――うぅっ、そうだった……」


 ライネに苦笑いで言われ、セリスは思い出したかのように、左の肩口を押さえるのだった。

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