10−6【公国の内乱6】



◇公国の内乱6◇


 セリスフィア・オル・ポルキオン・サディオーラス。

 帝国皇女の思考はワールドワイドであり、世界中に行きたい、来て欲しいという貪欲どんよくなものだった。

 その先駆けを、俺たちの村に見出してくれたこと……俺の未来のためのプランと一致してくれていること、感謝しか無いよ。


「こういう考えはどうでしょう。この村は帝国領土……今この場には、各国の重要なお方が揃っています、私を含めて」


 帝国皇女に、公国公子公女、エルフ族の王女。

 更には女神が四柱。

 そして転生者たち……控えめに言っても、ヤバメだろう。


「各国の主要が集まっているのです、ならばこの場を……一つにまとめればいい」


「……ここを中心に事を進めるっていうんだろ?」


 俺は言う、考えは同じなはずだ。


「そう!領土の返還を受けて……エルフ族の森はミオが管理すればいい、そして幸いにも……その場所はどこでしょう、はいミーティアさん」


 手を差し向ける、何故かミーティアに。

 しかしミーティアも、特に気にせず。


「ここから東の森ということは……帝国と公国の――国境ですね」


「その通りです、そして更にその場所から少し北に進むと?はいクラウさん」


 今度はクラウ姉さんに矢が飛んだ。


「……王国ね」


 セリス……お前、物事は完全有利に進めたいタイプだろ。

 つまりセリスが言いたいのは。


「つまり三国の国境近くを中心として、防衛ラインを設けるってことか……」


 帝国、王国、公国。

 その三カ国の国境が交わる場所……ルーファウスとウィンスタリア様がこの場にいる以上、内乱が広がって村に及ぶ可能性もある。

 更には王国だ。一度侵攻してきた軍……この前は聖女レフィルの騎士団と【リューズ騎士団】、それに少数の正規騎士だったが……再度の侵攻も視野に入れているな。


「そうよ。王国がまた攻めてくるなら、私たちも攻勢に出られる……そしてルーファウス公子とレイナ公女がいるのなら……当然、でしょ?」


「ああ、だな。公国が奪還しに来る可能性は高い……俺たちが奪ったわけじゃねぇけど」


「す、すみません」

「ご、ごめんね〜」


 いや、責めたいわけじゃないから。

 だけど……防ぎ続けるのもどうかとも思う。


「いや、いいさ。将来的に自分の利になるのなら……俺は迷わず遺恨を捨てられるタイプなんだ」


 ただし俺を殺したあの子は別だが。

 セリスの考えに賛同できる理由の一つだ……女王シャーロット。

 俺を殺した、あのメンヘラ地雷女……もう確信しているんだからな。


「ジルさん、返還された領土……自由にしていいんですよね?」


「ああ、信じられないか?」


「いえ、そうじゃなくて……女王陛下も了承済みで?」


「……ああ。同胞は散り散り、種の数も少ない。それぞれ別の場所に根を張っている者たちもいるだろうからな……それを無理矢理連れ戻す真似はしないさ。陛下もそうお考えだ……だから、すまないなルーファウス。折角公国の恥辱を挽回するチャンスを、わたしはミオに投げてしまった」


「い、いえそれは!ミオくんがそれでいいなら、ジルさんがそれでいいなら……僕は何も」


「助かる。それじゃあ決まりだ……俺とセリスの同意見を、東の三国国境に作るぞ。その名も――女神の国だ」


 どっかの女神を抜いた、三女神を祭り上げる。

 そして築くのは……きっと歴史に名を残す、世界一の村だ。

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