10−5【公国の内乱5】



◇公国の内乱5◇


 冷静になろうと椅子に座り直す。

 【無限むげん】で作った椅子は、材質が微妙なので座り心地も微妙な気がしてならないが……気のせいだろうけど。


「それじゃあ、ジルさんは俺にその……領土をどうして欲しいんですか?」


 ため息を吐きたくなる状況だけど、偉い人がいすぎてそれも出来ない。

 【テスラアルモニア公国】に奪われた領土を百年ぶりに取り戻せて、それでも俺にその領土を預けると言うんだ……目的は、完全に。


「――決まっている。森の復活だ」


「……ですよね」


「ねぇ、そんなこと簡単に出来るの?」


 クラウ姉さんがジルさんとルーファウスに問う。

 それは多分、難しい問題だとは思うけど……ここにピースが揃い過ぎててなぁ。


「あ、はい……問題は当然あります。僕たちの父であるコルセスカ公爵や、その派閥の貴族たち。つまり反対派ですね……それと、近隣諸国への宣言も」


 やはり反対派はいるよな、それに【女神ウィンスタリア】を連れてきてるんだ、言いようによっては拉致だからな。

 そして後者、建国ではないし、復活した国を触れ回るのは難しい、人間族に至っては、忘れている人も大勢いるはずだ。

 それを伝えるのは……大々的に――争ってからだろう。


「ルーファウスはそこまで考えてるんだな。そういえば……馬車は結構いたな」


 村に訪れたのは、何もこの三人だけじゃない。

 今の村には入ることが出来ないから、東の森……すなわちエルフの領土で待機しているんだ。


「はい。総勢二百程度ですが……僕たちに賛同してくれた方たちです、昔から……エルフ族の事を知ろうとしていた仲間です」


 ルーファウスと同じ考えの同志という事だ。

 先祖たちの行いを恥じて、領土を還すべきと考えていた仲間か。


「えっとでも、それだけの戦力で……?」


 ミーティアが疑問のように。

 確かに……【テスラアルモニア公国】は三代国家というべき大きな国だ。

 奪った土地を含めなくても、【リードンセルク王国】より少し小さい程度。

 帝国は異常にでかいから比較にならないが……公国と王国を足しても並べない程だ。


「……そこは、覚悟をしています。それに、力になってくれるのならと」


 そこで俺たち――転生者だ。

 ウィンスタリア様がどれだけの転生者を抱えているかは知らないが、ルーファウスに転生者絡みの話をしていなかった以上、協力を要請できる場所は限られる。


 そうだよな……セリス。

 俺が視線を送ると、その白金髪プラチナブロンドの皇女様は。


「この村は帝国の領土です、最近まで訪れなかった帝国わたしが言うのは恥ですが、それでも友好関係だと思っていますよ」


 それは俺に向けた言葉。

 あの時、この村を世界一にすると言ったように……その考えもまた、俺と同じなんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る