10−3【公国の内乱3】



◇公国の内乱3◇


 ルーファウスは頼りない父に任せておけず、国の未来を考えて行動をしたんだ。

 それは謀反と取られてもおかしくはない行動だが、あいにくルーファウスには【女神ウィンスタリア】が味方してくれている。

 それに、この場にいる俺たちは味方をする気で満々だ。


「……」


 しかし問題は目下、公国絡みの一番の被害者でもあるエルフ族……ジルさんだ。

 俺たちがいくら「味方をしよう!」と声を上げても、ジルさんがNOなら決裂、交渉はできない。

 ジルさんの思いをないがしろにしてまで、公国に味方する義理はないんだからな。

 でも……出来ることなら、数ある選択肢の一つを選んで欲しいと思ってるよ。


「……ジルさん、思うことはあるかも知れないけど」


 そもそもエルフのくにが滅ぼされたのは、ジェイルの情報漏洩と、公国貴族、果ては【女神ウィンスタリア】の助言が原因のはずだ。

 ルーファウスの言葉を考えれば、その関係性は昔からだと分かるしな。


「いや。分かっているさ……ただ」


 そう言って見るのは、やはりウィンスタリア様だ。

 発言が幼いとはいえ、理解し難い……受け入れ難い言葉もあった。

 地球なら間違いなく謝罪案件の……失言だ。


「む?どうしたセントエルフ、ウチになにかあるか?」


 そんな事なんて思われてないような笑顔だなぁ。

 それに、いつの間にかエリアルレーネ様の膝の上に座ってるし。


「いえ、百年前の侵攻時……指示を出したのは、ウィンスタリア様でしょうか」


「……う〜ん。どうだったか」


 空気……わっっっる!。

 眼光鋭く、おおよそ女神様を見る視線じゃないジルさんの圧を、ウィンスタリア様はまったく気にしないようにこめかみに指を這わせて考える。


「我々がエルフ族は森を追われ、散り散りになって生き延びてきました……それをまさか道楽で、国を滅ぼしたと」


 当然の権利だ。

 人間からすれば一世紀は長い、エルフにとってはそうでもなく、女神に至ってはたったの百年なのかも知れない。

 それでも、確かに道楽でやられたのなら溜まったもんじゃない。


「それは違いますっ!ウィンスタリア様は確かに適当で何を考えているのか分かったもんじゃない女神様ですが!それでも戦争を助長する発言はしませんっ!」


「おいルー、馬鹿にしてないか?」


 くっ……笑いそうになってしまった。

 女神には盲目と言うか、悪い意味合いの言葉は使わないと思いこんでた。

 俺とかクラウ姉さんはアイズをボロボロ言うけど、ルーファウスもだったよ。


「……そうか。ならばいい……最良な判断を、ミオがしてくれるだろう」


「へぁ!?……お、俺!?」


 急に白羽の矢が立った俺は、変な声で返事をしてしまう。

 俺にゆだねるのか……ジルさん。

 エルフ族の未来をこんな若造に……そして信じてくれているんだな、俺の選択が種族の未来を照らすと。

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