10−2【公国の内乱2】



◇公国の内乱2◇


 最大権力を持つはずのコルセスカ家、その息子は旅で世界を放浪。

 娘は冒険者になるべく他国の学校へ通うという、なんとも自由な教育方針の家系かと思ったけど……これはアレだ、内輪揉めというかなんというか。

 ルーファウスもレイナ先輩も、親をよく思ってはいないんだろうな。


「恥ずかしいけど、ミオくんの言うとおりだよね、ルー」


「うん……」


「わはははっ、ボイドは本当に政治の才が無いからなぁ〜!」


 ボイドってのは父親か。

 ウィンスタリア様は笑えるだろうけど、二人は親を言われてるんですよ?

 俺だったらキレるかも知れない。


「じゃあ、ウィンスタリア様を連れ出してるのも?」


「……はい。こうしたい――と言ったのは僕の考えです……ここに付いてきたのは、ウィンスタリア様の独断ですけど」


 だろうね、勝手に付いてきたパターン。

 そしてついでに居合わせたレイナ先輩を引き連れたのか。


「でさルーファウス、領土の返還の件だけど……これはルーファウスが言い出したのか?」


「……はい。半ば強制でも構いません、父と戦ってでも……そうしたいと思ったので」


 戦ってでも……か。

 ここまでするには、相当の覚悟と準備が必要なはずだ。

 ということは、もうその準備ができてるのか……もしくはさっきウィンスタリア様が言ったように、父親であるボコルセスカ公爵が余程の無能なのか……か。

 あまり友人の親を悪くはいいたくないけど、な。


「ああ……平気ですよ、ミオくんの考えてるとおりですから」


「……ス、スマン、顔に出てたか」


 ごめんルーファウス、レイナ先輩も。

 クラウ姉さんはそんな顔で見ないでくれ、俺が一番やっちまったって思ってるから!


「いえ、でも……はい。事実父は政治は下手くそ、武芸もおろそか、趣味は賭け事で魔法の練度も低い……最低です」


「うわー息子にそこまで言われてる〜」


 レイナ先輩がそう言うが、あなたはその娘さんです。

 そして俺は前世の親を思い出してしまった、まるで自分の親を言われてるみたいで、無性に……納得してしまったよ。


「親は選べないからな……でも、ルーファウスがそこまでの覚悟でこの村まで来たのなら、協力はやぶさかではないな。な?」


「ええ、そうね」


「ふふっ……うん、私も」


 クラウ姉さんもミーティアも、親には思うところがあるらしい。

 特にクラウ姉さんは、前世の親に何かありそうだ。


 俺たちの中で、公国の意見関係なく……ルーファウスの意志を受け入れて進むことは出来る。そしてジルさんもきっと、エルフ族の領土……すなわち森が復活するという念願が叶うのだと割り切って、過去の遺恨を払拭して欲しい。

 難しいとは思う。年月が経っているとはいえ、やはり同族が被害にあっているんだ……だけど俺たちと一緒なら未来で笑うことが出来るんだと、そう思ってくれれば。

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