プロローグ10−2【救世神のきまぐれ2】



◇救世神のきまぐれ2◇


 この場にいる人物の紹介は、あらかた終わったかな。

 女神が四柱に、それぞれ転生者や従者。

 約一名だけ、従者も転生者もいないけどな……お前だよイエシアス。


「さてっと。冗談はこの辺にして……ウィンスタリア様が言う“領土の返還”……つまり【テスラアルモニア公国】が奪った土地、エルフの国が存在した場所の返還という事……なんだよな、ルーファウス」


「は、はい!そうなのですが……大変申し訳ない事に、ウィンスタリア様が変なことを言い出してしまって」


 なぜか帝国の領土にされてたもんな、ウィンスタリア様が言い出した時。


「え、あれ?違うのかぁ??」


 座る椅子を前後に動かしながら小首を傾げる。

 いやマジ幼女……妹のコハクや、【竜人ドラグニア】のリアよりも幼く見えちゃうよ。


「ち、違いますよウィンスタリア様……僕たち・・の曽祖父が若かりし頃、エルフ族の王子殿下から得た情報をもとに、侵攻をしてしまった場所……それは【パルマフィオキアナ森林国】です」


 僕たち?曽祖父?って事は……それってまさか、ルーファウスの後ろにこっそり控えてる、フードをガッツリと被ってるお人のことか??

 血縁関係がなければ、僕……って言うはずだしな。となると、あれがお姉さんか。

 あれ、妹だっけ?めちゃくちゃ背丈が小さく見えるけど。


 なぁ、どうだっけウィズ。


『――あの人物の反応を報告しようとしたら止められましたので。回答を拒否します』


「えぇ……」

「ふふっ……」


 俺の能力――【叡智えいち】ことウィズさんのご機嫌斜めな返答に、声を聞くことが出来る俺はガックリし、俺の魔力が体内に循環することで【オリジン・オーブ】を操る事ができる、その作用のおかげでウィズの声が聞こえるミーティアが笑った。


「……あ」


 おっと、フードのお方と目があった。

 あれ……やっぱり、どっかで会ってる気がする。


『拒否です』


「ぐっ……もう分かったよ。なぁルーファウス、そちらは?」


「あ……あぁ〜すみません、紹介もなく始めてしまって。なにぶんウィンスタリア様が勝手をするもので」


 オーケーそういう事にしておこう。


「ほら、姉上……ミオくんたちにご挨拶をしましょう、知り合い・・・・なのでしょう?」


「「え」」


 そうリアクションするのはクラウ姉さんとミーティアだった。

 ルーファウスはフードの人物を立たるも、緊張しているのかガチガチだ。


「あ……えと」


「「「「「……」」」」」


 まぁ当然、針のむしろになるよな。

 なんか吊るされてるイエシアスまで注目しているし。


 サイズ的にクラウ姉さんとほぼ一緒、少し高いくらいだ。

 ルーファウスの姉って事は……十八、十九かそこらか?

 幼く見えるルーファウスだが、俺よりも年上なんだもんな。


「あの……その」


「ほら姉上、いつまでもフードを被っていたら失礼に当たりますよ、この場には各国の偉いお方もいるんですからっ」


「あちょ!あ、ちょ!!」


 高貴な身分のお方だと一目で分かるようなフード付きローブを、ルーファウスは引っぺがす。

 すると明らかになるのは、ルーファウスと同じ真っ赤な髪の毛、そして天族の証である緑色の瞳。


「「「あ!」」」


 そのリアクションをするのは、俺とミーティア、そしてクラウ姉さん。

 でもってこの場にいないキルネイリア・ヴィタールも、きっと同じリアクションをするだろう。

 そう、この四人に共通するのは――【冒険者学校・クルセイダー】だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る