エピローグ9-2【救いは求めるものではない】



◇救いは求めるものではない◇


「なーんもないなー……?」


「ウィンスタリア様っ!」


 村に入った幼い女神の言葉は、率直過ぎる感想だった。

 子供が素直に思いのままを口にするような、そんな感じだ。


「ははは、その通りだからいいよルーファウス」


 だいたい、コレを見せるためにそのままにしたんだからな。

 最低限の衣食住が出来る施設だけを【無限むげん】で整えて、後はアイズの教会と、客人用のプレハブだけだ。

 後は井戸や、食事ができる場所など……本当にそういう場所しか建築していない。


「野菜は?」


「え?村のですか?」


 コクコクと大きく頷く女神。

 すげぇ子供っぽい……リアを見てるみたいだな。


「そう!!食べたいんだよー」


「……正直に言うと、数は少ないですね。ご覧の通り、村はこんな有様です……まだ復興も始まってませんからね。しかも……この前またゴタゴタがありまして」


「ははは……」


 横のミーティアも苦笑いだ。

 でもってこれは俺の考えではなく、アイズとエリアルレーネ様の考えだ。

 近いうちにウィンスタリア様が来ると。

 【テスラアルモニア公国】出身のルーファウスの事を考えれば、俺もそこは予測していたが、こんな幼女だとは思わなかったけど。


「お見せできるものはほとんどありません。心苦しいですが、今の村には……アイズレーン様とエリアルレーネ様のもとへ案内するくらいしか」


「いやいや、苦しゅうないぞミオ・スクルーズよ……これこそウチが求めた現状っ!救いは求めるものではないからな、差し伸べるものだ!」


「……と言うと?」

(……来た)


 ウィンスタリアの特徴として、救世を施すところがあるらしい。

 つまりは、困っている誰かを放っておけないんだ。

 ただし……自分からは助力を求めるのは違うという……難しいところだ。

 事前情報がなければ、知らずに助けを乞うていたかもしれない。


「うむっ!ウチは救世の女神である、救いが全て……【テスラアルモニア公国】も、そういう国なのだ!」


「……」


 おっと、後ろのジルさんがちょっと気を放っておられる。

 ルーファウスは申し訳無さそうな顔をしているし、ミーティアは顔が青い。


「そ、そのことでお話があるんです!」


 女神の言葉を遮るように、ルーファウスが間に入る。

 やっぱりな……ルーファウスは前からエルフのジルさんを気にかけていた、自分の祖国が侵略を働いて奪い取った国を、よく思っていないのだろう。


「……おいルー、邪魔だぞ。ウチはミオ・スクルーズと……」


「その話、詳しく聞かせてもらおうか……ルーファウスよ」


 ジルさん……前に出ちゃったよ。


「おお、そなたセントエルフではないか……久しぶりに見たな!」


「……そうでしょう、【テスラアルモニア公国】に攻め入られた国ですからね」


 うわ〜〜〜……空気が不味い。

 だけどそうさ、これも折り込み済みだ。


「そ、それじゃあその話は女神の教会で。よろしいですか?ウィンスタリア様……ジルさんも」


「うむ!」


「……ああ」


 形としては最悪、だけどジルさんとも事前に話はつけてある。

 だから打ち合わせにないブチギレだけはやめてね、ジルさん。


 そうして、【女神ウィンスタリア】を教会に案内し……とうとう、女神四柱が出揃うのだ。

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