9-116【国境の村にて女神は集う40】



◇国境の村にて女神は集う40◇


 戦闘を終えたことで結界が解かれ、チラホラと村人の影が見え始めた。


「マズイな……ウィズ、全力で魔力を込めていい、【無限むげん】を使って破損した全ての箇所を、記憶にある限り復元してくれ」


『――了解』


「ミ、ミオ……そんな事をして、平気なの?」


 魔力が……ってことだよな?


「ああ、【無限むげん】は魔力の消費が極端に少ないし、ウィズが場所や範囲を指定して、発動もやってくれる。俺は魔力を提供するだけさ」


 計算するに、今日の騒動は小一時間ほど。

 そのうち村人が見たのは、最初の少しだけだろうから、何が起こったかをあやふやにすれば良い。


「……それならいいんだけど……」


「心配しなくていいって、無理はしないからさっ」


 そう言ってミーティアの頭を撫でておく。

 サラサラで柔らかいんだよな、この綺麗な青い髪は。


「……もう」


「ははっ。それよりさティア、きっかけは……ユキナリの馬鹿とイリアのゴタゴタってことでいいんだよな?」


「ええ……詳しいことは、まだ私たちにも分からないんだけど。ただの喧嘩には見えなかったわ」


 ユキナリが暴走したのは、イエシアスの仕掛けた“何か”と、【支配しはい】の進化の過程で起きた非対応……自分の能力になったからよく分かる。

 この【支配しはい】……【破壊はかい】や【強奪ごうだつ】と同じだ、確実に――オウロヴェリアの権能。


「能力で操ったにしては、この馬鹿まで操られてたからな……きっとイリアにも、そこまでさせる一端が、この馬鹿にあったんだろうな」


 イリアといえば、【アルキレシィ】だけど。

 【支配しはい】は魔物を操る……もしかして、そのまさかか?

 あの時あの場にユキナリもいたし、あの黒い角は【アルキレシィ】のだ。


「もしかして、【アルキレシィ】関連かしら……」


「十中八九そうだろうな。コレは俺の考えだけど……【アルキレシィ】になる前の魔物、【ガルノレオ】だっけ、そいつを【支配しはい】してクレザース家に渡したのが……この馬鹿って可能性だ」


「……なるほど……」


 ミーティアは腕組みして考えていた。

 おお……胸が……ってダメダメ、疲れで思考がおかしくなってる。


「……おっと、この気配は……女神様のご到着だな」


「え?……あ、本当」


 二人でその姿を確認した。

 アイズとエリアルレーネ様……そしてゼクスさんもいる。

 そうか、誰か足りないと思ってたけど、ゼクスさん……エリアルレーネ様に止められたな?


「……これは……どうして……」


 エメラルドグリーンの髪の女神は、真っ先に倒れるユキナリを見た。

 そしてセリス、ライネだ。

 差は殆ど無い、どの転生者に対しても平等……でも、その視線の意味は――どうして生きているの?……そう、俺には見えた。

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