9-104【国境の村にて女神は集う28】



◇国境の村にて女神は集う28◇


 【極光きょっこう】を操作し可能になった技、【極光天輪きょっこうてんりん】。

 攻撃に防御、サポートなんでも出来る万能技だ。


 特に俺が見出したのは、収縮させて魔力の流れを封じる光輪。

 今の俺は女神にも痛みを与えられる、それなら……拘束だって出来るはずだ。


「これは……ミオぉぉ!!」


「俺は忠告したぞ!だからさっきの時点で撤退しておけばよかったんだよ!そうすれば少なくとも、アンタはここで捕まることはなかったんだ!……逃げてももう遅いんだよ!」


 走り出したイエシアス。逃がすかよ!

 光輪三つを操作して、輪っかで締め付けるように。


「この……くっ、きゃっ!!」


 三ヶ所を同時に締め上げる。

 首、胴、足を固定され……芋虫のように転がるイエシアス。

 首の光輪は魔力制御、胴は痛みを与え、足は移動封じ。


「……終わったなイエシアス、アンタの制御は俺がもらったぞ。霧になって逃げることもしないって事は……魔力も限界だったんだろ」


「この……人如きがぁぁっ!!」


 アンタも元・人……魔人なんだろうが。


「さてと、どうしてやろうか」


「ふん。どうせ女の身体を触ったこともないヘタレでしょう、どう?触ってみる?女神の神秘的な身体……好きにしていいのよぉ?」


 俺を見てそう言うイエシアス。

 この空気……さっきも感じたな。


「――なるほど。この甘ったるい魔力、これが蠱惑の神の能力か……人の心に入り込み、掌握して操る。さっきもこうやって操ろうとしたんだな……転生者の能力とは違うから、今も多少は発動出来るってことか」


「!?……まさか」


 そのまさかだ。

 もう俺に、アンタの誘惑は効かないよ。


「どうやら権限が上回ったらしいな。俺が――アンタら創られた女神よりも」


『――正確には、能力の神格化が原因です。【無限むげん】が神の能力と同等に成長したことが要因と思われます』


 【無限むげん】はもう転生の特典ギフトじゃなくなったという事だな。

 アイズの【拡張探索エクステンション・サーチ】やイエシアスの【蠱惑こわく】、エリアルレーネにもあるんだろう。


「……最悪だわ、ここまでの怪物を転生させるなんて……アイズレーンの奴」


「人を化物呼ばわりかよ、リレイヤ」


 嫌味のように、イエシアスことリレイヤさんをあおる。


「だってそうでしょう?私たち女神にダメージを与えるどころか、こうして拘束していたぶるだなんて。しかもこの短期間、短時間で……はっ、馬鹿らしくもなるわ。こうなると分かっていたら、君が子供のうちに回収しておくんだったわ」


「ははは、そりゃあ残念だ、ざまぁみろ」


「うぐっ、ちょっと!痛いじゃないっ――離しなさい!!」


 縄で縛られた捕虜ほりょのように、胴体部分を持ち上げる。


「痛いようにしてるからな。ほらさっさと行くぞ……アイズとエリアルレーネ様のところに晒し上げてやんよ」


 イエシアス戦を終え、アイズの教会へ行こうとした俺に……ウィズが。


『――ミオ、残念ですが【女神イエシアス】は一旦放置を。連絡が取れたのですが……ミーティアたちの方が危険です』


「……なんだと!?」


 ドサッ――!


「あぐっ!この……!」


 ドスンと落ちたイエシアス。


「離せって言うからだろ……じゃなくて、いいかイエシアス。アンタは後回しだ、お前がどんな罠を仕掛けたか分からんが、好きにはさせない。仲間にも危害は加えさせない……やるならとことんだ、アンタのことも――シャーロット女王のこともな」


「ちょっ……待って!まさかこのまま……なっ!」


 そう言って、俺は【転移てんい】を開始するのだった。

 村の中央ではどうなっていたのか、ミーティアから報告を受けて十数分……俺の未来に、村の未来に、国の未来に、世界の未来に関わる事柄を……解決する為に。

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